米ドル/円 日足

週間予想レンジ:116.00~118.50

メインストラテジー:押し目買い

・試練が多くても底固い展開
・有事の米ドル買いより円安
・高値更新で一層上値追いへ

【図表1】米ドル/円(日足)
出所:筆者作成

アナリシス:

先週の米ドル/円相場は大幅続伸し、週足では大陽線を示現し、2017年1月以来の高値更新を果たした。先週の安値114.79円は始値114.82円に近く、終値117.29円は高値117.37円とほぼ同じだったことに鑑みると、非常に強い上昇波にあり、またしばらく上値追いしやすい環境にいることが分かる。

地政学リスクに起因する「有事の米ドル高」の側面があったものの、米ドル/円の高値更新により、米利上げ直前における円買いポジションの総撤退や新規円売りポジションの急増が推測される点は見逃せないだろう。

一番わかりやすい理屈としては、ロシアによるウクライナ侵攻で地政学リスクが急上昇したことで世界株式市場の急落があったにもかかわらず、米ドル/円は底堅く推移し、円はかつてのように「リスク回避先」として評価される痕跡が全くと言っていいほどなかった。そのため、米利上げ前における米ドル買い/円売りは一番行われやすく、また米ドルの買いは安心感に繋がるため、先週の大幅上昇がみられたわけだ。

テクニカル上の支援材料も然り、である。先々週一旦115.82円まで上昇したものの、週後半に失速、114.78円での大引けとなった。週足では、本来は弱気サインである「スパイクハイ」の陰線を形成したものの、先週一貫して上昇し、先々週高値の115.82円のブレイクをもって上昇モメンタムの加速がもたらされ、弱気サインが否定されたことに続き、一転して強気サインの形成基盤となった。

ウクライナ情勢に関する情報が錯綜し、ロシアのプーチン大統領による核の恫喝やウクライナ核施設への攻撃などリスク材料が相次ぎ、また先々週末リリースされた2月の米雇用統計が好悪交じりでも一旦弱気反応が見られたが、先週リリースされた2月の米消費者物価指数(CPI)が40年ぶりの高さとなり、米ドル買いが促されたわけだ。つまるところ、先々週後半の反落は、ユーロ/円の大幅下落につられた値動きと見なされたが、円の主体性がなかった以上、先週米ドル買いの受け皿として大幅安になった。

直近のサインでは、2月24日の陽線が示した「強気リバーサル」のサインが支配力を持ち、3月8日までレンジ相場の形成をもたらし、またその上放れをもって上昇モメンタムの増加を決定した。3月11日の大陽線は、1月、2月高値に対するブレイクを果たした後に形成されただけに、米ドル買いのみではなく、円買いポジションの踏み上げも推測され、一層上値余地を拡大していると思う。

従って、1月、2月高値の116円円前半は一転して支持ゾーンとみなされ、116円関門前後の押しがあれば、少なくとも短期スパンにおいて押し目買いの好機となってくるだろう。週足で観察すればわかるように、すでに大幅な上昇を果たし、新たな変動レンジへシフトした米ドル/円は2016年高値の118.67円まで大した抵抗がないようで、118円関門の打診やブレイクは既定路線とみなせる。

もちろん、実際に米利上げの実施が行われた後、いわゆる「噂の買い、事実の売り」が出やすく、米ドルの一旦頭打ちも想定されるが、目先としてはテクニカル上の優位性を無視できず、強気トレンドに便乗するしかない。

というのも、地政学リスクの浮上で大分様子見してきた市場参観者の多くはこれからトレンドを追随するしか対応策がなく、欧米日の株式市場の大調整やウクライナ侵攻がもたらした地政学リスクの高騰でも円が買われたのではなく、大きく売られたわけだから、逆張りの円買いはしばらくできそうにもない。米利上げ後の米ドル高一服があっても、米ドル安へ転換することはないだろう。場合によっては、早期120円心理大台の打診も視野に入る。

豪ドル/円 日足

週間予想レンジ:85.00~87.50

メインストラテジー:押し目買い

・高値更新で新たなレンジ変動へ
・豪ドルの優位性はなお鮮明
・リスクオンへ転換の余地

【図表2】豪ドル/円(日足)
出所:筆者作成

アナリシス:

豪ドル/円相場は先週続伸し、1月末から連続6週間の上昇を果たし、86円関門直前まで上昇した。豪ドルの強気変動は間違いなく豪ドル対米ドルの強さに由来するが、先週豪ドル対米ドルは一旦調整が行われたにもかかわらず、豪ドル/円の続伸が明らかに米ドル/円の大幅続伸につられた側面が大きく、これからも上昇余地を拡大するだろう。

もっとも、豪ドルの強気変動には、見逃せない2つの決定的なポイントがある。1つは地政学リスクの強まりで原油、穀物をはじめとした商品相場の急騰。もう1つはユーロ全面安がもたらした豪ドル対ユーロの急騰だ。その構造は先週でも継続されたものの、ユーロ対豪ドルのスピード調整が見られた。そのため、豪ドル/円の続伸自体は、値幅が米ドル/円ほどではなく、やや制限された印象があったわけだ。

しかし、米ドル/円の上放れで円売りの継続が確認されたところが大きく、既述のように、豪ドル/円は先々週からの続伸で、従来の82~84円といった大まかなレンジを上放れ、新たなレンジ変動にシフトしてきた。

1月高値の84.32円をブレイクし、また大引けしたことに鑑み、2021年11月安値の78.78円を起点とした上昇波の進行で一旦86円関門の打診があってもおかしくなかったため、先週の値動きはそのシナリオに沿った動きと理解できる。いわゆるジグザグ変動構造におけるN字型計算の推測となり、変動レンジの上限が拡大される見通しだったことも先週解説した通りであり、これからさらなる上値余地を拡大するだろう。

また、84円関門以上の大引けや定着自体が強気のサインとみなされた。先週の安値は、一旦84円関門を下回ったものの、結局85.90円をトライしたことに鑑み、84円関門前後における支持ゾーンが一段と確認された。

そもそも2月10日や23日の日足が示した「スパイクハイ」のサインは、本来重要な抵抗ゾーンを示したが、そのブレイクや上放れが確認されたからこそ、強気変動の基調を確認でき、先週の83.79円の安値も明らかに元の抵抗ゾーンを意識したわけだ。そのため、段階的な上昇レンジの上方シフトが行われたとみている。

そのため、2021年10月高値85.99円のブレイクを有力視しており、また2021年5月高値から形成されてきた大型保ち合い自体が「複合型三尊底」に近いフォーメーションだったことに鑑み、高値更新があれば一段と弾みがつくと予想される。

この場合、86円後半の抵抗があっても脆く、高値打診の継続でまず87~88円といった上値トライに繋がるだろう。いずれにせよ、豪ドル対円の優位性が、米ドル/円の大幅上放れをもって一段と確立された以上、値幅の一段拡大はむしろこれからだとみている。

長期スパンにおける視点としては、度々強調してきたように、米ドル/円と同様、強気ラリーの継続が有力視される。2020年のコロナショック後の安値を起点とした大型強気変動は、2021年5月から高値圏における大型レンジを形成してきた。しかし、あくまで調整子波と数えるため、先週の続伸で早期完成の可能性が増大し、これからの高値更新をもってメイン変動(上昇)が一段と拡大される公算が大きい。高値追いも一手かもしれない。