試練の1月に続き、2月1週目も波乱が続いた米国株式市場

2022年の1月は米国株にとって試練の月でしたが、2月の1週目も引き続き波乱の週となりました。先週のS&P500は0.33%下落、ナスダック総合は1%の下げですが、大型株のウエイトの高いナスダック100は1.56%下げて1週間を終えました。

米国の個人投資家のセンチメントは最悪の領域に

前回のコラムで、米国株式市場に存在する不確実性について触れました。現在のマーケットには数多くの不確実性が存在し、投資家を不安にさせています。

以下の図表は米個人投資家協会(AAII)のブル・ベアレシオの1987年から直近までのデータをもとに、ブルからベアを引いたものです。このデータは逆張り指数として使われていますので、強気の人が多いということは今後の見通しは明るいと言うより、むしろ慎重になるべきで、弱気の人が多いということは、悲観的な投資家が多いため、今後の見通しは明るいと解釈されます。

直近のデータでは強気の投資家は−17%のマイナス、つまり弱気が強気を17%超えているということです。1週間前のー29.8%からは改善していますが、これまでの平均は7.4%ですので、歴史的に見ると−17%の数字はまだ悲観的な投資家が多いことがわかります。現在の市場にはあまりにも不確実な要因が多く、このレベルは不安定な状態の表れであり、同時に最悪のセンチメントから改善する可能性を秘めていると言えます。

【図表】
出所:ブルームバーグよりマネックス証券作成

米国ではサプライチェーンの制約や、オミクロン株が経済に与える影響はまだあるものの、パンデミックの最悪期は過ぎ、労働者が職場に戻る動きもあります。今後数ヶ月を見るとサプライチェーンの制約は改善し、品不足やインフレは緩和されてくると思われます。

長期的には安心できる兆しが見えてきたものの、足元の株式市場は引き続き大荒れとなっています。

GAFAMのGFAの決算発表に一喜一憂した今週のマーケット

先週注目の決算発表は2月1日のアルファベット(GOOGL)から始まりました。2021年、同社はGAFAM銘柄の中で、最も株価の上昇率が高く65%上げています。同社は、過去5回連続で市場の予想を上回る決算発表を行っていますが、毎回決算発表後に株価が上昇しており、市場の期待が高い中での決算発表となりました。

今回も投資家の期待を裏切ることなく、全ての事業分野で売上を増やし、利益率も大きく増やすといった内容に加え、20分の1の株式分割を行うと発表しました。これを受け、今回も翌日のマーケットで株価は7.5%上昇、1,264億ドル(約14.5兆円)の時価総額を増やすこととなりました。

一方、翌日の2月2日引け後のメタ・プラットフォームズ(FB)の決算発表では、事前予想を大幅に下回る発表を行っただけでなく、次回のガイダンスもマーケットの期待を下回る内容となりました。メタが現在直面する同業との厳しい競争や、売上高を巡る動向が懸念材料とされました。この発表を受け、翌2月3日に同社の株価は26%下落し、1日で2,320億ドル(約26.7兆円)もの時価総額が失われました。これは米国の株式市場の歴史で1日の企業の時価総額の喪失額としては最大です。

これを受け、大型のテクノロジー銘柄が売られる展開となり、この日のS&P500は2.4%、テクノロジー銘柄のウエイトの高いナスダック100は4.2%の下げとなり、マーケットのセンチメントは最悪となりました。

アマゾンの好決算が生んだ好センチメントを打ち消そうとした雇用統計、
悪材料はほぼ織り込み済みか

この流れを再び変えたのは2月3日の引け後に発表されたアマゾン(AMZN)の決算発表でした。マーケットが見守る中アマゾンは、売上は前年同期比で9.4%の増加を発表、北米Eコマース事業と、他社にシェアが取られたのではという懸念があったクラウド事業が売上増のドライバーとなりました。

今後の見通しについては、米国でオミクロン株の感染者数がピークとつけたとすると、サプライチェーンの制約、コロナ禍のコスト増の懸念が払拭され、Eコマース事業の収益増加に貢献してくると思います。翌2月4日のマーケットでアマゾンの株価は13.5%上昇、1日で1,910億ドル(約22億)の時価総額が増え、米国株式市場の歴史で1日当たりの増加幅としては過去最大となりました。

実は、この好決算によって作られた投資家のセンチメントを複雑にしたのは、2月4日(金)の朝寄り前に発表された雇用統計でした。非農業部門雇用者数が前月比で46.7万人と事前予想を大きく上回り、注目されていた平均時給上昇率も5.7%増加となりました。これを受けて、10年債利回りは1.9%を超え、コロナ以前の2020年1月来の高いレベルへ上昇、3月の利上げについてはこれまでの市場の予想である0.25%でなく、0.5%の利上げが行われるのではないかという期待感を高めました。

アマゾンの好決算を受けてマーケット全体が上がりそうな機運が高まっていたなか、2月4日朝に雇用統計が発表されるや否や、10年債の利回りが上昇、株式市場は一時的に弱含んだものの、その後株価は上昇に転じました。最終的にこの日のS&P500は0.52%の上げ、ナスダック総合は1.58%上昇して1日を終えることになりました。

マーケットの方向性を左右するメガキャップ企業の決算発表は終わりましたが、S&P500社のうち  222(約44%)の企業がまだ決算発表を終えていません。今後数週間は引き続き決算に注意に払う必要はあるものの、マーケットのセンチメント的には、今後起こり得る悪いニュースをだいぶ織り込んだのではないかと思います。

ただし、今後現実的に起きるかもしれないリスクとして、ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけとするロシアと欧米諸国との軍事紛争が挙げられます。ロシアの動きから目を離すことができません。