週間ではプラスだが、引き続き乱高下の続いた米国株式市場

先週S&P500は0.77%上昇、ナスダック100は0.11%上げて終わりました。

1週間のリターンとは裏腹に、先週も株価が乱高下する1週間でした。
1月24日(月)のボラティリティは特に激しく、テクノロジ-銘柄の比重が高いナスダック100は寄り付きから大きく売られて始まり、昼過ぎまでに4.9%下落したものの、その後引けまでになんと5.7%上昇し、最終的には前日比で0.5%のプラスで終了しました。歴史的に見てもボラティリティの高い1日となりました。
この日のマーケットを見ていた人は心臓に良くなかったことと思います。残りの4日間も、株価は乱高下を続けました。 

現在の米国株式市場は不確実性が高い

では、なぜこのように株価が乱高下したのでしょうか。それは、現在のマーケットの不確実性の高さです。そもそも10年債利回りが上昇してグロース株が売られるというセンチメントが悪いなか、下げ止まりの兆しすらなかったマーケットについて多くの投資家は不安に思っています。

FRB(米連邦準備制度理事会)による利上げに関する見解は毎週のように変わっています。マーケットのコンセンサスでは、3月の後半に1回目の利上げが起き、その後2022年は合計で4回だろうと言われていました。それが、先週のパウエルFRB議長のタカ派的なコメントを受け、金利先物市場は4回ではなく5回の利上げを織り込み始めました。それに対して、マーケットは「話が違うじゃないか」という驚きを隠しきれません。

また、市場には2022年の利上げは7回あるだろうと見る意見も出ています。マーケットはそのような不確実性を嫌がるのです。パウエルFRB議長も利上げの回数にはついては触れておらず、マーケットは想像するしかありません。加えて、QT(量的引き締め)政策についても、早期に実施したいという意向を示しているものの、タイミングについては言及していません。

マーケットの見通しについても、強気・弱気の意見が交錯しています。マーケットはここから50%下がるという意見の人もいます。その一方、これらの銘柄は割安だから買いのチャンスだという意見のアナリストもいるのです。

欧州の一部の国ではオミクロン株の感染状況が改善してきていますが、その一方で、地政学的リスクの懸念が高まってきています。プーチン大統領はウクライナ国境へロシア軍の配備を強化しています。これを受けてバイデン米大統領はウクライナの隣国のNATO加盟国に米軍を派遣しようとしています。プーチン大統領は2014年、当時ウクライナ領であったクリミア半島にロシア軍を送り、併合したという実績がありますので、今回ウクライナへ侵攻する可能性を否定することはできません。 

マーケットの下げを止めたのはアップルの好決算

そんな不安定な状況にあった米国株をさらなる下落から救ってくれたのが、1月27日(木)の引け後に発表された2.8兆ドルという世界最大の時価総額を誇るアップル(AAPL)の決算発表でした。 決算を受けた翌28日(金)、アップルの株価は7%上昇、これを受けてS&P500は2.4%、ナスダック100は3.2%とそれぞれ上昇し、マーケットの流れが変わりました。 アップルの決算発表については、サプライチェーンの制約があるなかiPhoneの売り上げが増やせるのかという疑問や、コロナ禍における中国市場での売上などの懸念もありましたが、非常に素晴らしい記録的な決算となりました。

売上は1,239億ドルと前年同期比で11%増、アナリストのコンセンサス予想の1,187億ドルを上回りました。EPS予想は1.89ドルに対して2.10ドルという結果です。 

アップルのティム・クックCEOによると、iPhoneの売上は2021年末の最後の2週間が最も強かったとのことです。もちろんクリスマス商戦の時期で強かったのでしょうが、クックCEOは、この強い売上のモメンタムは継続するだろうと強気のスタンスを示しました。 

中国の売上が21%伸びており、これは過去最高の売上です。中国で、iPhoneのアップグレードの需要が強かったのが売上増の理由のようです。今回の決算も非常に良かったのですが、懸念されていたサプライチェーンの制約について、クックCEOは2021年の第4四半期と比べ、これからの3ヶ月で改善してくると思うとコメントしています。 

まだまだ続く第4四半期の決算発表

これまでのところS&P500社のうち169社、34%の企業が決算発表を終えており、現時点では前年同期比で30%の増益となっています。
 
2月1日(火)の引け後にはGAFAM企業のアルファベット(GOOGL)の決算発表が予定されています。同社の決算発表は過去5回において事前予想を上回り、2021年に株価は65%も上がっています。デジタル広告で世界ダントツのシェアを誇るアルファベットは、2021年の経済再開の恩恵を受け、売上を増やしてきました。市場の期待感が高いなか、今回も市場の期待を上回る決算発表ができるのかに注目です。
 
2月2日(水)にはメタ・プラットフォームズ(FB)、2月3日(木)にはアマゾン(AMZN)の決算発表が行われる予定になっています。アマゾンにとって、2021年はインフラ投資の年であり、株価はほとんど上がっていませんでしたが、2022年は投資の回収を始める年だと考えています。メタ・プラットフォームズは、2021年に1年間でメタバースに100億ドルの投資を行うと発表しました。メタバースは息の長い投資テーマだとは思いますが、株価の下落があるとすればそれはポジションを作る機会の到来だと思います。
 
アップルの決算は、先週の暗かったマーケットのセンチメントに安堵感を与えてくれたものの、決算発表はまだ続きますし、先に述べた不確実性は続きます。年初からの株価の調整で、マーケットは悪いニュースをかなり織り込んだと思うものの、まだ予断を許さない状況であることも確かです。