中国株が下落している2つの要因

2022年1月後半の中国株ですが、中国本土市場・香港市場は共に下落となっています。2022年1月14日終値から1月28日終値までの騰落率は、上海総合指数が-4.5%、香港ハンセン指数が-3.4%となっています。

上海総合指数は1月21日から大きく下落し、株価は200日移動平均線を大きく下回り、これまで上向きだった50日移動平均線や200日移動平均線も下向きになり始めています。

香港ハンセン指数は年始から回復基調にあったのですが、100日移動平均線を少し上回ったところで反落する形となっており、現在は下向きの50日移動平均線前後に株価は位置しています。

1月後半の中国株が大幅に下落している理由は大きく分けて2つあります。

1つは米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ抑制を重視する姿勢をとっており、金融政策の緩和縮小・引き締めを市場の予想よりも早いペースで行うことへの懸念が生じていることから、これによって先進国の株価が全般的に調整していることです。中国株もこの影響を受け、特に米国で大きく下落しているITハイテクセクターが売られています。

2つ目の理由は旧正月の連休前であったことです(2022年の旧正月の元旦は2月1日)。中国株のアノマリーとして、毎年、旧正月前には中華系の投資家はポジション整理の売りを入れてくることがよくあります。保有している株式を現金に換えて旧正月を迎えるというのが中国系の投資家によく見られる傾向なのです。

特に2022年は前述のように先進国の中央銀行の金融政策変更から世界の株式市場が大きく揺れている状況です。中国本土市場は1月31日 ~ 2月4日が旧正月の休場となり、香港市場は2月1日 ~ 2月3日が旧正月の休場となるわけですが(1月31日は半日休場)、その期間に先進国の株価が急落すると対応出来ませんので、手仕舞い売りが先行しやすい状況にあったことが考えられます。

旧正月明け後の投資資金の戻りに期待

1月下旬に発表された中国の経済指標はまちまちの結果でした。12月の鉱工業生産は4.3%増(市場予想3.7%増、前月実績3.8%増)、小売売上高は1.7%増(市場予想3.8%増、前月実績3.9%増)、第4四半期のGDPは前年比4.0%増(市場予想3.3%増、前月実績4.9%増)となっています。

また、1月の中国国家製造業PMIは50.1(市場予想50.0、前月実績50.3), 中国国家非製造業PMIは51.1(市場予想51.0、前月実績52.7)、Caixin中国製造業PMIは49.1(市場予想50.4、前月実績50.9)でした。小売売上高やCaixin中国製造業PMIは予想を下回る結果となっており、全般的に景気の減速傾向が感じられるところです。

このように、米国と比較すると中国の経済指標は軟調です。しかし、金融政策も米国とは逆方向で、FRBがタカ派的(インフレに対応するために金融引き締めを強化)な姿勢を強める中、中国人民銀行は2022年に入って、複数の主要貸出金利を引き下げるなど、景気低迷を避けるために金融緩和に動いています。これは株式市場にとって追い風です。

もちろん、中国株には多くの課題が残されたままです。不動産企業の苦境は続いており、中国恒大集団(03333)については当局がリスク解消に向けて資産売却などに動いていますが、債権者との和解は済んでおらず、引き続き先行きの見えない状況が続いています。

また、IT企業への締め付けも継続しており、例えば2021年7月以降、新作ゲームが中国当局に承認されない状況が続いており、ゲーム大手のテンセント(00700)やネットイース(09999)などへの影響が懸念されている状況です。

また、オミクロン株への懸念がある中で、大規模な人の移動を伴う旧正月を迎えており、今後の感染拡大も懸念されるところです。

しかし、それでも中国当局が景気悪化を懸念して、金融緩和方向へ動いていることはプラスであり、今後は政策期待からの買いも入りやすくなるのではないかと思います。海外市況の影響はもちろんあると思いますが、旧正月明けからの投資資金の戻りに期待したいところです。