FRB議長の発言で揺れた世界の株式市場
先週は、米・日をはじめとする世界の主要な国・地域の株式市場が大いに動揺することとなりました。
既知のとおり、先週1月26日に閉幕した米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が発した幾つかのコメントを市場が「想定以上にタカ派な印象」と受け取ったことが主な原因の1つです。
何より想定外だったのは、議長が市場との「対話」を一旦放棄したと見られても仕方のない発言を行った点であったと考えていいでしょう。
2022年秋に中間選挙を控えるバイデン米大統領が、国民に対して「何が何でもインフレ高進に歯止めをかける強い姿勢を示したい」と考えているのは周知の事実。
そんな米大統領の思いに寄り添うことをFRB議長が優先していることによって「金融当局の独立性と市場からの信頼性が損なわれている」との批判が、米ゴールドマン・サックスの経営幹部などから浴びせられているのも無理からぬことであると思われてなりません。
もちろん、FRBが2022年中に開かれるすべてのFOMCにおいて毎回利上げ実施の決定を下すとは限りません。パウエル議長は、もう少し市場との「対話」を重んじた言い回しをすることもできたはずです。
また、3月に実際に米利上げが実施されるとして、その利上げ幅が0.25%に留まるのか0.5%になるのかもわからず、そのこと自体が先行きの不透明感を一層増幅させてしまっていることも否定はできません。
そもそも足元のインフレ高進はそういつまでも続くものなのでしょうか。12月の米ISM製造業景況指数にあっては、「入荷遅延」と「仕入れ価格」の大幅低下が確認されており、その意味では今週2月1日に発表される1月分の結果も細かくチェックすることが重要です。
円安より米ドル高が優勢、ユーロ/米ドルは下値を試す動きも
ともあれ、先週の外国為替市場ではFRBの利上げ期待とウクライナ情勢の緊迫化などを背景にリスク回避的な米ドル買いの動きが加速していました。
その結果、米ドル/円は一時115円台後半の水準まで上値を試すこととなりましたが、クロス円の動きはまちまちとなっており、やはり足元で勝っているのは「円安」ではなくて「米ドル高」ということになると言えます。
その実、先週はユーロ/米ドルが一段の下値を試す動きも見られており、先週1月28日には一時1.1120ドル台まで下押す場面も見られました。
今週は2月3日に欧州中央銀行(ECB)の定例理事会が開かれる予定となっており、おそらくはほぼ無風で通過するものと思われます。FRBや英中央銀行(BOE)、カナダ中央銀行などの政策方針がタカ派色を強めていることに比して、ECBがなおもハト派路線を維持すると見られていることは、今後もユーロの上値を押さえる主な要因になると見ておいていいでしょう。
ただ1月半ば以降、ずっとユーロ/米ドルが強い売り圧力を受けてきただけに、今回のECB理事会前後には一旦ショート・カバーの動きが生じる可能性もあると見ます。
米ドル/円は再び115円を割り込むか
もちろん、ウクライナ情勢の行方次第ではあるのですが、仮に買い戻しの動きが見られた場合は、改めて戻り売りのタイミングをうかがいたいと考えます。また、ユーロ/米ドルに一旦リバウンドの動きが生じた場合は、目先的に米ドル/円が調整含みの展開となる可能性もあるものと思われます。
先週1月28日には同日発表された12月の米個人所得や雇用コスト指数などが事前予想を下回ったことを受けて、市場が米国債の買いと米ドルの売りで反応する場面もありました。
先週末の米株市場で主要3指数が軒並み大幅高となったことから、週明けの東京市場でもリスクオフのムードが多少緩み、先週末までの米ドル買いが一旦巻き戻される可能性もあるでしょう。
結果、米ドル/円が再び115円を割り込む場面も想定できなくはないわけで、その場合は押し目買いのチャンスをうかがうのも一法であると思われます。