みなさん、こんにちは。大発会は急騰で幕開けとなった2022年ですが、予てからの懸念の通り、徐々にダレた展開へとシフトしてきました。
俄かにインフレ、それに伴う金融引締め観測が台頭してくる中、どうも株式には逆風が吹いているという状況にあります。当面は大きな材料が見当たらないため、この構造はまだしばらく継続するのでは、と私は想定しています。
2023年度創設を目指す「こども家庭庁」
さて、今回は「こども家庭庁」について取り上げてみましょう。政府は2021年末、こども家庭庁を内閣府外局として2023年度中に創設する意向を示しました。外局とはいえ、新しい省庁の発足となり、専任の閣僚、長官(国務大臣)を置くとしています。まだその概要は明らかにされていませんが、先日始まった通常国会で法案が提出され本決定となる見通しです。
株式投資の観点からすれば、「国策に売りなし」という相場格言もあります。今後は徐々にこども家庭庁に関連する銘柄が相場の物色対象になっていくのではないかと想像します。そこで、今回はどういった銘柄群に注目しておきたいか、を議論していきたいと思います。
政府の本気度が問われるこども関連施策の司令塔的存在に
こども家庭庁では、少子化対策や虐待・いじめ対策、ひとり親家庭支援、児童手当、保育所、認定こども園などがその管轄になると予定されています。つまり、これまでは内閣府、厚生労働省、文部科学省で各々管轄していた領域をこの新庁でまとめてコントロールしていこうという意向があるようです(幼稚園は文部科学省管轄のまま)。
少子化問題や虐待などはかなり前から大きな社会問題として捉えられており、こういった政府のアプローチは至極当然と言えるでしょう。もちろん、少子化対策の特命大臣は2005年から設置されており、政府はこの問題を蔑ろにしてきたわけではありません。しかし、その効果がどれだけ出てきたかと言えば、決して芳しいものではない状況にもあります。
例えば、確かに待機児童数は減少し始めましたが、出生率の改善は進んでおらず、抜本的な問題解決が進捗してきたとはまだ言えないためです。今回の新庁創設とそれに伴う管理管轄領域の整理は、そういった状況を打開し、しっかりと成果を出していこうという政府の意向がうかがえるものだと受け止めます。
この新庁設置構想は菅政権時に生まれたものですが、首相が変わっても継続されているということは、それだけ政府は本気であると言えるのかもしれません。
保育分野や家事支援事業の成長に期待
ではどういった分野に注目できるでしょうか。まず思いつくのは、保育の分野です。具体的には乳幼児の教育や託児施設などでしょう。これらはこれまでも産業として成立していましたが、こどもへの予算投入は将来の「投資」であるとの考えに基づき、より潤沢な補助金予算などがつけられる可能性があります。
さらに、待機児童数は減少し始めていますが(厚生労働省によると、2021年4月時点で約5,500人。2017年同時点は約26,000人)、「隠れ待機児童」の存在や女性就業率の更なる上昇を想定すれば、まだまだ施設や保育士が足りている状況とは言えません。
これは生産人口急減に直面している我が国が女性活用を急ぐ問題と表裏一体のものとも言えます。子供のいる家庭への家事支援事業などもまた、こども家庭庁によって成長が加速するというシナリオを描くことができると考えます。
「こども家庭庁」の推進には企業側の意識改革も不可欠
しかし、私がより期待するのは、男性の家事分担支援です。そもそもこども家庭庁は伝統的な価値観においてはなかなか両立し難い多産化と女性活躍というミッションを負っていると言えます。
これを実現するには、女性が「(子育てをしながら)男性並みに働く」という発想ではなく「(男性も家庭の仕事をフェアに担当し)女性が男性と同じ条件で労働に向き合える」という意識改革が必要でしょう。
いくら教育や施設に予算を投じても、こういった意識の抜本的な改革がなければ少子化傾向に歯止めがかからないのでは、と考えるのです。そして、これらはコロナ禍におけるステイホーム期間を通じて、実はかなり具体像が見えてきたのではないか、と想像しています。
これらは基本的に意識改革である以上、特定産業でそのメリットが生じるというものではありません。各企業において「(男性であっても)家事の相応の負担は当然」という社内風土を形成できるかどうかが問われることになります。
SDGsやESGに真摯に取り組む企業に注目
昨今は、SDGsやESGへの取り組みを通じて、そういった社内風土を意識する企業が増えてきましたが、現時点では未だ表面的なアプローチが多いのもまた事実です。
例えば、男性の育休取得率などに言及する企業はほとんどありません。つまり投資先の本命としては、こういった取り組みに逸早く着手し、本当の意味でのSDGs/ESGに取り組む企業になるのでは、と位置付けます。
こういった企業こそ、有為な人材を集めることができ、それが企業価値の拡大に繋がることでしょう。SDGs/ESGへの取り組みは個別企業のHPなどで紹介されています。是非、その内容をご覧になり、他社と比較してみて下さい。
当該企業にこども家庭庁の目指す社会に対応できる素地があるのかどうかが、透けて見えてくるはずです。そしてこども家庭庁には、こういった仕組みの定着を後押しさせる政策を期待したいところです。