米ドル/円の「1月効果」

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。

相場の世界には、「January Effect(1月効果)」という言葉があります。その年の相場の流れは、1月で決まることが多かったといった意味です。ところで、さらに言えば、そんな1年の相場の流れを考える上で重要な位置付けになりそうな1月相場は、年明け早々の流れと一致することが多かったようです。

考えてみると、新たな年の始まりで、市場参加者のリスクテーク意欲は極めて強いでしょう。このため、年明け直後の相場は一方向に大きく動きやすく、その相場が肯定されるとそのまま1月の相場の流れとなり、否定された場合でもそれが1月の相場の流れを決めることが多かったということではないでしょうか。

以上のように考えると、まだ2022年が始まったばかりですが、今週の値動きは、2022年の相場を考える上で、実は重要な意味があるのかもしれません。先週末の米ドル/円の終値は115円程度だったので、今週末それを上回り米ドル陽線引けとなるか、それとも115円割れで米ドル陰線引けとなるか。それは1月の米ドル/円の方向、ひいては2022年の米ドル/円の方向を考える上で重要な手掛かりになる可能性があるのかもしれません。

米ドル/円と日米金利差との関係

では、今週の米ドル/円はさらに上がるのか、それとも下がるのか。2021年の途中、6月頃から米ドル/円は金融政策を反映する日米2年債利回り差と高い相関関係で推移してきました(図表1参照)。その意味では、米ドル/円がさらに上がるか、それとも下がるかは日米2年債利回り差、とくにその主役である米2年債利回りが鍵になりそうです。

【図表1】米ドル/円と日米2年債利回り差 (2021年1月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

そんな米2年債利回りは、先週にかけて0.7%を上回るまで上昇しました(図表2参照)。ところで、これを90日MA(移動平均線)からのかい離率で見るとプラス60%以上になります(図表3参照)。経験的に、同かい離率のプラス60%以上は、短期的な「上がり過ぎ」懸念が極めて強い可能性を示しています(図表4参照)。

【図表2】米2年債利回りの推移 (2021年1月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成
【図表3】米2年債利回りの90日MAからのかい離率 (2021年1月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成
【図表4】米2年債利回りの90日MAからのかい離率 (2010年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

以上のように見ると、新年相場の米ドル高は、米金利上昇に連れるという意味では自ずと限界があるのではないでしょうか。むしろ米金利が短期的な「上がり過ぎ」修正で低下するようなら、それに連れて米ドル/円も反落する可能性があるのかもしれません。

ポジションで考える

1月相場、さらには2022年1年の相場の流れを決める可能性のある年明け早々、1月第1週の米ドル/円は上がるか、それとも下がるのか。これについて、今度は為替ポジションの観点から考えてみましょう。

まずは、円の対米ドル・ポジションを見ると、ヘッジファンドなどの取引を反映しているとされるCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジション(対米ドル)は、2021年12月に売り越しがほぼ半減となりました(図表5参照)。これは、円売り・米ドル買いの行き過ぎた懸念が緩和され、新年相場において円売り・米ドル買いが仕掛けやすくなっている可能性を感じさせるものではあります。

【図表5】CFTC統計の投機筋の円ポジション (2020年1月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

ただ米ドルのポジションを見ると、こちらは買い越しが20万枚程度といった大幅な状況に大きな変化はなさそうです(図表6参照)。以上のように見ると、米金利の上昇に連れる形での米ドル買いの急拡大は、2021年末にかけて一部ではポジション整理があったものの、全体的にはまだ大きな変化はないのではないでしょうか。

【図表6】CFTC統計の投機筋の米ドル・ポジション (2010年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

さて、今回は2022年の相場の流れは、1月の流れが参考になる可能性があり、そしてそんな1月相場は、年明け早々に決まる可能性があるといったことで、目先の米ドル/円の行方について、日米金利差、ポジションとの関係を中心に考えてきました。

その結論は、米金利は短期的に「上がり過ぎ」懸念が強いため、目先的な「米金利上昇=米ドル高」には限りがありそうということでした。では、1月第1週が米ドル陰線引けとなり、それは1月の米ドル安、ひいては2022年の米ドル安の流れの示唆になるのか。

前者についてはともかく、後者については今のところ私は否定的、つまりかりに目先的に米ドル安となっても、それはあくまで一時的な動きで、年末にかけて120円を目指す米ドル高が続くと考えています。ただ、米ドル/円の目先の動きについては、米国株などの動向と合わせて、注意していく必要はあるでしょう。