>> >>特別インタビュー【1】印IT大手「ウィプロ(WIT)」のビジネス戦略、M&Aにおける2大原則とは?

デジタルの進化に合わせて人材スキルをアップデート

岡元:御社ではどのように人材を活用されていますか。リーダーシップ構築プログラムはありますか。また、ダイバーシティへの取組みについても教えてください。

ジャイン氏:はい。この業界では特に人材が鍵を握っていると考えています。この分野における成功または失敗は、人材に大きく依存していると思います。人材は、この分野やこの業界に限らず他のどんな業界にとっても成功の鍵と言えるかもしれません。

私たちは2020年に実施した組織再編を受けて、ダイバーシティを更に重視しています。今では、グローバル・アカウント・エグゼクティブを含め、多様な上級管理職を有していますが、管理職を顧客の近くに移しました。現在、管理職の60%以上が、顧客との距離が近いローカル市場に配置されています。

現在、弊社の管理職の採用においては、外部からの優秀な人材の採用と、組織全体で社内昇格したパフォーマンスの高い管理職の登用が混在しています。そして、ダイバーシティへの取組みを大幅に強化しました。文化・性別・民族における多様性を尊重し、管理職を含むすべてのレベルで真のグローバル組織であることを反映しています。

それと同時に、ピラミッド構造も非常に重要です。2021年、新入社員の受け入れに大きな投資をしました。2022年に約2万5千人から3万人の新入社員を採用する予定であることを発表しました。同様に、社員のエンゲージメントや経験、報酬や表彰、再教育の機会なども、弊社の活動の中心となっています。

また、社員を再教育することは、私たちの資産において非常に重要なことだと考えており、横断的な技術教育プログラムを行っています。テクノロジーは常に進化し続けているため、私たちはそれに合わせてアップデートしていかねばなりません。ですから、社員に新しいスキルセットの横断的なトレーニングを行うことは、私たちにとって非常に重要なことなのです。

ESG・脱炭素戦略を積極的に推進

岡元:温室効果ガス排出量ネットゼロのためのESGへの取組み、特に気候変動への対応について教えてください。 

ジャイン氏:私たちの責任は、収益性の高い成長を促進することや、成長軌道を加速させることに留まりません。ESG、優れたガバナンス、社会的責任、エコロジーへの取組みは、弊社の活動の中心となっています。私たちはそれらに向けて大きな一歩を踏み出し、積極的に取り組んでいます。

気候変動は複雑な課題で、私たちの気候変動プログラムは、これまでに取り組んできた数年分のプログラムを超えるものです。

パリ協定の目標に沿って、私たちは2040年までに温室効果ガスの排出量をネットゼロにすることを約束しました。それと同時に、2030年までに温室効果ガスの排出量を55%削減することを宣言しました。私たちは、脱炭素戦略を積極的に推進することに重点を置いています。

さらに、特にコロナ禍の困難な時期には、地域社会との連携にも力を入れてきました。2021年度には、ウィプロ・リミテッドがウィプロ・エンタープライズ・リミテッドとともにアジム・プレムジ財団を設立しました。そして、新型コロナウイルスによる健康被害や人道的危機に対処するため、1億5千万ドル以上の寄付を行いました。

コロナ対応としていくつかの方法を行いました。その1つは会社のキャンパスを病院に変えることでした。私たちはインドのプネにあるキャンパスを改造して450床の病院を作りました。その他にも様々な政府機関と協力し、各国での予防接種活動にも貢献しています。 

また、コロナ禍において生活用品の供給支援も行ないました。というのも特にコロナ発生当初は、多くの人が支援をしたいと思っても、個人としてどのように支援できるのか分からずに困っていたからです。当時、私たちは社員と共に、仕事がなく、食べ物に困っている人々の生活を支援するために、様々な取組みを行いました。 

このようにESGへの取組みは私たちの活動の中核をなすものだと思います。

更なる能力向上と市場シェア獲得に向けて投資を強化

岡元:2022年のビジネス展望を教えてください。 

ジャイン氏:特にデジタル変革、顧客満足体験、アプリの進化や、デジタル・オペレーション・クラウドサービス、サイバー・セキュリティ、エンジニアリング・サービスなどの需要が加速しています。その中で私たちは特に、デジタル化やクラウド化に向けたプロセスを加速しました。

私たちは現在の需要環境に大変満足しており、ここ数四半期で非常にうまくいっている戦略を実行することに集中しています。そして、引き続き成長率を加速させるための改善に取り組み、能力向上と市場シェア獲得のための投資を強化していきたいと考えています。

ここ数四半期、弊社の成長は市場分野やサービスを問わず非常に広範囲に及んでいます。直近の2四半期では、結果的に4.5%の成長を達成し、組織全体でも4.5%以上の成長を遂げ、これは市場に見られる強さと需要の勢いを表しています。

岡元:今後数年間でどれぐらいの成長率を見込んでいますか。また、成長ドライバーは何ですか。

ジャイン氏:将来の具体的な見通しについては言及していませんが、需要環境に非常に期待していることと、うまく機能している戦略の実行に引き続き注力していることをお伝えしましょう。

四半期ごとの成長率も向上しています。私たちは、市場シェアを獲得するために参入し続け、戦略を実行することに集中し続けています。

岡元:御社の5年後、10年後のビジョンをお聞かせください。

ジャイン氏:弊社は世界中に22万人の仲間がいて、実に多様でユニークな存在です。私たちは業界のグローバルリーダーであり、急成長するダイナミックな企業であり、これからも革新的な企業でありたいと思っています。また今後もシェアを拡大し、優秀な人材獲得に努めていきます。

ソリューション、デジタルや技術、イノベーションの能力を通じて永続的な価値を顧客に届けたいと考えています。それこそが私たちのビジョンです。その実現のためにも、優れた人材を確保し、顧客の真のパートナーとなり、業界の真のグローバルリーダーとなるために、明確な価値、ブランド価値を創造していきたいと思います。

岡元:それでは最後に、日本の個人投資家の皆さんにメッセージをお願いします。

ジャイン氏:弊社は戦略に沿って行動しており、株主の皆さまにも貢献していると思っています。今後も戦略の実行に注力していきます。そして、私たちは自信を持って市場シェアの獲得に参画しています。

また、私たちは原則に基づいて株主還元を行なっており、純利益の45~50%を株主に還元しています。

この2、3年で、私たちは実に多くのことを成し遂げました。これからも株主の皆さまのために価値を創造していきたいと思います。この度はお招きいただきありがとうございました。 

岡元:本日はインタビューに応じていただき、ありがとうございました。

本インタビューは2021年12月20日に実施しました。