みなさん、こんにちは。

師走を迎えても、株価は一進一退の推移が続いています。どうもすっきりしない生煮えのような相場展開と感じざるを得ません。前回のコラムでも触れましたが、寅年相場は政治・経済で波乱が起こりやすいという相場格言もあり、現状の株価はまさにその寅年となる2022年の状況を先読みし始めているかのように思ってしまいます。

例年、ここからは「掉尾の一振」期待から株価は上昇に向かう傾向があるものですが、2021年はいかがでしょうか。2022年を占う上で、相場の地合いをここで見極めておきたいところです。

デジタル基盤を積極的に構築・活用し、新たな地方創生の加速へ

さて、今回は「デジタル田園都市国家構想」をテーマに採り上げましょう。この構想は岸田内閣が目玉とする経済政策の1つであり、先月中旬には有識者による第1回目の「デジタル田園都市国家構想実現会議」が早速開催されました。

現時点ではまだ何か結論が出る段階にはありませんが、議事録などを読む限り、大まかな方向性は見えてきているように感じています。このデジタル田園都市国家構想を極めて乱暴にまとめてみると、デジタル基盤をフル活用して、地方の利便性と可能性を高めていこうというものと言えるでしょう。

かつて地方創生などが積極的に謳われましたが、今回の政策はそれをデジタル基盤の整備・拡充によって実現を加速していこうという仕掛けと位置付けます。

目指す方向性は目新しいものではありませんが、まずは予算の優先や「地方を活性化しなければならない」という観念論が先行して、「どうやって地方を活性化させるか」という方法論がぼんやりしていた過去の政策と比較すると、より具体的なアプローチが提示されたと受け止めます。

デジタル田園都市国家構想を目指す背景

この背景には、5GやAI、データセンターなどといったデジタル技術の飛躍的な進化があることは言うまでもありません。さらにステイホームなどが強く求められたコロナ禍を契機に、最新のデジタル技術は個々人のレベルにおいても日常的に導入されることとなりました。
 
その結果、我々国民の側にも、一斉に通勤・通学しなくとも仕事や勉強ができるという意識の変化も起こっています。

通勤圏や通学圏という制約が外れる(あるいは緩和される)ことで、我々には居住地の選択肢が一気に広がり、そのような選択肢がたくさんある社会というのは、究極的には個々人の満足度の引上げに繋がることでしょう。デジタル田園都市国家構想は、コロナ禍を奇貨としてより現実的なアプローチになるのでは、と考えます。

デジタル田園都市国家構想の実現に向けて注目される産業

では、具体的にどのような産業がこの構想において注目されることになるのでしょうか。シンプルに考えれば、デジタル基盤の整備が大前提となりますので、それらインフラの構築・強化に関する産業は当然、そのメリットを享受できると考えます。

インフラとまでは言わないまでも、個々人がデジタル基盤を活用するために使用する端末や機器に関しても、コロナ禍でそれまで苦戦が続いていたパソコン需要が急拡大したように、新たな需要が発生すると考えます。

既に政府の会議で採り上げられていますが、ドローンなどはその好例と言えるでしょう。リモート授業/研修が普及すれば、遠隔でも実験や実習ができるように、AR/VR技術や3D映像技術なども導入される可能性も高いと考えます。

AR/VRや3Dは現状ではまだ娯楽用途の域を越えていませんが、こういった形で活用されれば、(その機器の普及も含めて)一気に社会に認知されていくのではないでしょうか。現時点ではまだ絵空事ではありますが、技術面では既にかなりの部分がクリアされています。このようなデジタル田園都市国家構想が市場拡大の火付け役になるのではと私は期待しています。

デジタル施策による世界を見据えた地方発の産業発展にも期待

しかし、私がより期待したいのは、このような施策の実現により、地方発の産業が多数出てくることです。

現時点ではまだ「(都心でなくとも)地方でも楽しめる」といった地方を都心と同じレベルに引き上げようという考え方が基本になっています。これでは真の意味で地方は創生しません。本義的には「地方でも良い」ではなく「地方が良い」という発想にならなければ、地方に人や産業を持続的に引きつけることは難しいでしょう。

そのためにも、世界で戦うことを目線に据えた企業が地方からもどんどん出てくる必要があります。地元に根付きながらも世界的企業が多数成長した京都はそれを実現できた好例でしょう。デジタル基盤の整備が進めば、第2、第3の京都が生まれてくるのではないでしょうか。

昨今は地方に拠点を持つ企業の新規上場が決して少なくありません。このような企業にとって、デジタル田園都市国家構想はまさに渡りに船となるはずです。デジタル技術をフル活用して大きく成長する企業が出てくることを期待して止みません。