2021年、厳しい1年だった中国株

上海総合指数はなんとかプラスの推移

中国本土市場の代表的な株価指標である上海総合指数をみると、2020年末の株価は3,473.069ポイントでした。その後、2月18日には一時3,731.687ポイントの高値を付けましたが、その後下落していきました。しかし、概ね200日移動平均線が支持線となって盛り返し、9月14日には一時3,723.845ポイントの高値を付けています。

しかし、その後は調整し、横ばいの200日移動平均線と沿うような株価推移となり、11月30日の終値は3,563.887ポイントとなっており、2020年末の株価より+2.6%の位置にあります。年初来で20%以上上昇している米国のS&P500などと比較すると物足りなさは感じますが、それでもなんとかプラスの推移を維持しています(11月30日終値時点)。

香港ハンセン指数は下落が継続

一方、香港ハンセン指数は大きな下落となっています。2020年末の株価は27231.13ポイントでした。その後、2月18日には一時31183.36ポイントの高値を付けましたが、その後下落していきました。それでも3月には一旦下落が止まり、その後は非常に緩やかな上向きの100日移動平均線に沿う形で横ばいの株価推移が続いていたのですが、7月に急落して一気に株価は200日移動平均線を割り込みました。

その後も下向きの50日移動平均線に頭を押さえつけられるような形で下落が続いており、11月30日には年初来安値となる23,175.37ポイントを付けています(11月30日時点)。11月末に株価が下落した理由は新型コロナの新しい新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」による世界経済減速懸念で世界的に株価が下げた影響もあります。しかし2021年の香港株が下げ続けた根本的な要因は大きく分けると2つに分けられると思います。

2021年、香港株が下落した2つの要因

「共同富裕」構想により、IT企業への締め付け

1つは習近平国家主席の打ち出す「共同富裕」構想により、株価の上昇によって富を独占してきたともみられているIT企業への締め付けが厳しくなっていることです。アリババ・グループ・ホールディング(09988)やテンセント(00700)などを中心にIT主要企業には様々な罰金や罰則が与えられると共に、これらの銘柄の株価は大きく下落しました。

中国本土市場と異なり、中国のIT企業が数多く上場する香港市場はアリババやテンセントなどのIT主要企業が株式市場で大きな時価総額の構成ウェートを占めていましたので、影響は激甚でした。

最終的には主にテンセントとアリババを標的に、中国は「データ税」のようなものを新設し、IT企業の富を社会へ還元させるのではないかとする観測もあります。そうなると従来100の稼ぐ力があったとしても、税金で2~3割ほど減ってしまう恐れもあるのかもしれません。

不動産企業への規制と不動産税の試験導入による影響

もう1つの理由は不動産市場の問題です。こちらも「共同富裕」構想に基づくものですが、中国は上昇が続く不動産価格について、貧富の差が分かれる要因となっていると問題視し、不動産企業に対して大規模な資金調達を禁ずる規制を打ち出しました。不動産価格が上がるから大量の資金を集めて開発するということを繰り返していた中国の不動産企業は大きな打撃を受け、中国恒大問題(03333)に代表される債務問題へと繋がりました。

さらに10月には中国で「不動産税(日本でいうところの固定資産税)」の試験導入方針が伝わったこともあります。これまで右肩上がりの不動産神話が続いてきた中国で、地方政府から政治的権力者、富裕層などの個人に至るまでが、不動産を次々に開発してはそれらを無税で持ち、そして価格・賃料が上がり続けるという仕組みの恩恵を受け続けてきたわけですから、不動産税は大きな転換となりえます。持つことで税がかかるなら、不動産需要に一定の圧力がかかり、不動産会社の販売にも影響が出ます。

2022年の展望、香港市場の行方の鍵を握るIT企業

中国政府の半導体産業育成政策の行方

「共同富裕」構想の方針は今後も続くものとみられることから、IT企業が市場の大きな構成ウェートを占める香港市場の見通しは2022年も明るいとは言えないでしょう。しかし、長期に目を転じれば、明るい材料もあります。

まず、米国からの半導体依存を脱すべく、中国政府の半導体産業育成政策の中心を担うはずだった国営半導体大手の精華紫光集団は1000億元を超える負債を抱えて経営破綻し、現在再建中です。アリババが主導するコンソーシアム(他に浙江省政府のファンドなども参加)が500億元超を投じて買収し、事業継承する案が急浮上しています。これは中国政府とアリババなどのIT企業の共存共栄を意味する出来事になるのではないかと思います。

中国政府の「第14次5ヶ年電子商取引発展計画」の目標は達成されるか?

また、中国政府は「第14次5ヶ年電子商取引発展計画」の中で、ネットサービスによる取引額を、2020年の37兆元(650兆円)から2025年に46兆元にまで引き上げる目標を揚げています。

その中核を成すのは世界中に12億人を超えるユーザーを持つアリババ集団になるはずです。株価が大幅に下落するほど中国当局によるIT企業への規制強化が報じられる中、13回目を迎えた2021年の独身の日(11月11日)のセールスイベントは例年よりも派手な演出や広告が控えられましたが、アリババのプラットフォームには29万ブランドが参加し、過去最高となる5,403億元の流通総額(GMV)がありました。

海外投資家勢にとって、中国の長期的な成長性は魅力的か

テンセント、アリババは個人情報という極めて重要な資産を独占的に集めて莫大な富を得ていることに批判もあり、中国は共同富裕のスローガンを打ち出すとともにこれら企業の統制を強めてきました。しかし、潰してしまえば元も子もなくなり、構想は共倒れとなります。

今後個人情報は国家のもの(所有権)であるということにして統制を強め、国のデータを利用して儲けさせてあげるので、その代わり富の幾分かを共同冨裕構想に沿って還元する、持ちつ持たれつの体制が確立されていくのではないかと思います。そして、これらのことを加味し、海外投資家は中国市場から離れるどころか、むしろ安値で買い増している模様です。

英フィナンシャルタイムズの集計によると、海外投資家による人民元建ての中国株・債券の保有残高は2020年末比で約13.7兆円増え、9月末時点で134兆円となっているようです(日経新聞11月13日)。株と債券の割合はほぼ半々です。規制強化や債務懸念があっても、将来を見据えて少しでも高い運用利回りを得たい海外投資家勢にとって、やはり中国の成長性は安値時に魅力的に映っているのでしょう。

中央銀行による緩和策によって欧米では金余りの状況が続きます。特に香港経由のストックコネクト、ボンドコネクトという株・債券の相互取引を利用した買入が増えているようです。

10月にも、チャーリー・マンガー氏が率いるデイリー・ジャーナルが7-9月期にアリババ集団を買ったことが話題になりました。デイリー・ジャーナル(DJCO)は7-9月期にアリババ集団の米国預託証券(ADS)13万6,740ADSを追加取得。9月末時点での保有数は30万2,060ADSとなっており、四半期ベースで82%増えたことになります。マチャーリー・マンガー氏は「投資の神様」と呼ばれるウォーレン・バフェット氏が率いる投資持ち株会社、バークシャー・ハサウェイの副会長です。

このように考えていくと、2022年の中国株の展望は決して明るいものではなく、調整基調は思っている以上に長引く可能性があるものの、優良銘柄の買い場であるとの考え方もできるのではないかと思います。