色濃く漂うリスクオフのムード
足元の金融相場は全般に気迷いムードが色濃く、数ある不透明な変動要因を消化し切れていない相場の現状が浮き彫りになっています。
その実、先週12月3日には米10年債利回りが一時1.33%台まで大きく低下したのにも関わらず、米株市場ではIT・ハイテク株が全般に強めの売り圧力に押されるという少々チグハグな動きも見られました。全般に円高傾向が強まったことも考え併せると、要は市場全体にリスクオフのムードがかなり色濃く漂っているということになるのでしょう。
不透明要因の1つは、言うまでもなく新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の“正体”が、まだハッキリしていないことです。その解明が進むごとに漂う不透明感も後退するものと思われますが、今のところは「以前のどの変異株よりも感染リスクが高い」と見られることが市場の警戒感を煽っています。
とはいえ、同時に「重症化リスクは低い可能性」との声も聞かれている上、主要なワクチン開発・製造企業は迅速かつ柔軟な対応が可能であるとしており、少なくとも2020年2~3月のようなパニック状態に陥ることはないと見ておいて良いと思われます。
インフレ高進の抑制を打ち出すFRB
一方、先に行われた米上院銀行委員会において、パウエルFRB議長が「経済が堅調でインフレ高進が2022年半ばまで持続すると予想される中、12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では大規模な債券買い入れプログラムの縮小加速を検討すべき」と証言したことも市場にはサプライズとなりました。
パウエルFRB議長の“突然の変節”は、その背後にバイデン米政権への“忖度”が見え隠れしていることも確かでしょう。バイデン米大統領はパウエルFRB議長の議長“続投”に大いに尽力・貢献したものと考えられ、そのことについてはパウエルFRB議長も強い謝意を表していました。そして、今バイデン米大統領はインフレ高進に対する国民の不満が高まり続けていることに頭を痛めています。
そこで、パウエルFRB議長もこれまで以上に「インフレ高進の抑制」を方針として強く打ち出す必要に迫られたという部分もあるのでしょう。もちろん、以前からテーパリングの加速と早期の利上げ開始を訴える向きは少なくなかったわけで、今週行われるFOMCでもその方向性が一層鮮明になる可能性が高いと見られます。ただ、それでもFRBがこれから進めるのは、あくまで金融政策の「正常化」に過ぎません。
今が押し目買いの好機となるか?
よって、今後も基本的に趨勢的な米ドル高の流れは続くと考えられるわけですが、足元ではリスクオフのムードが強まる中で円高傾向が強まっており、米ドル/円も再び113円割れの水準に押し戻される格好となっています。
結論を急ぐと、ここは押し目買いの好機ということになるのではないでしょうか。少なくとも、今月内にはオミクロン株の特質が徐々に明らかとなり、その具体的な対応策もわかってくるでしょう。その結果、市場に漂うリスクオフのムードは徐々に後退し始めるものと期待されます。
そうであるとするならば、今のうちから少しずつ相場のアンワインドの動きに乗る心積もりもしておきたいところです。ことに、オミクロン株の検出をきっかけとして過度なまでに大きく下押した米ドル/円、クロス円のリバウンド余地は小さくないと考えられ、ひとまず米ドル/円については再び114円台に乗せる動きを想定しておきたいと考えます。
一方、ユーロ/米ドルはオミクロン株の検出をきっかけに生じていたリバウンドの動きが既に頭打ちとなっています。なおも、上値は21日移動平均線付近での抵抗が意識されやすいと見られ、今後も戻り売りが基本になるでしょう。
オミクロン株の問題が今週12月16日のECB理事会に影響する可能性もあり、仮に1.12ドル割れの水準を明確に下抜ける展開となれば、次に1.10ドルの心理的節目を試しに行く可能性も十分にあると見ます。