新型コロナウイルスの変異株による影響で米ドル安へ

先週末11月26日、南アフリカで検出された新型コロナウイルスの新たな変異株を巡る話題によって、国際金融市場の顔つきは一変することとなりました。「オミクロン」と名付けられた変異株に対する懸念は、足元で強まっていた米ドル高の流れを一旦逆転させるのに十分なインパクトとなった模様です。

欧州でデルタ変異株が再拡大している渦中であったとはいえ、米国や日本などではアフターコロナに向けた動きが盛り上がっていただけに、ショックと反動が生じやすい状況であったことも確かでしょう。

一時的にも状況が一変したことで、それまで積み上がっていた米ドル買いのポジションが一気に巻き戻され、想定外の状況変化に膨大なストップロスが次々に巻き込まれる状況も相まって、相場は大きく米ドル安に傾くこととなりました。

もちろん、今回はたまたま米国の感謝祭シーズンに重なるタイミングであったことも見逃せません。市場参加者が限られ、薄商いが続く中で相場が大きく振れやすい状況にあったことは、ある程度割り引いた上で先週末の米ドル急落を捉える必要もあるでしょう。

リスクオフに傾く東京株式市場

新たな変異株検出の一報を最初に受けた11月26日の東京株式市場において「まだ変異株に関する詳しいことは何もわからないから、とりあえず売り」の動きが出て、それに乗じる格好で仕掛け的な投機の売りが積み上がったことも事実です。

その結果、先物主導で日本株が大きく値を下げたことが、同日の欧米市場に強いマイナスのインパクトを伴って伝播したことも、市場全体を大きくリスクオフに傾かせるのに大きかったと言えるでしょう。

果たして、この新たな変異株はどの程度の感染力があり、既存のワクチンで対応可能なのかどうか。そうした点についてより確度の高い情報が得られるまでには少々時間もかかることでしょう。

むろん、それまでの間に様々な噂や根拠に乏しい憶測、悲観論なども飛び交うことでしょうが、ここはできる限り付和雷同しないように努めたいところです。

仮に、新たな変異株の一部が高い感染力を有し、ワクチンが効きにくいものであったとしても、その影響が及ぶのは米国に限ったことではないはずです。市場のリスク回避姿勢が一層強まれば、むしろ米ドル買いの動きが強まる可能性もあると考えられます。

混乱時に意識したいチャートの動き

今回のような「混乱」が一時的にも生じた場合、いつも再認識させられるのは「レートが大きく揺さぶられて最終的に行き着く先には、決まって需要なチャートポイントが位置している」ということです。

例えば、米ドル/円はとりあえず一目均衡表の日足「雲」上限の水準が目先の下値の目安として意識されやすいと見られます。なお、先週11月25日以前の米ドル/円はもともと目先的な高値警戒感が強い(=目先調整入りの可能性が高い)状態にあったということも再確認しておきたいところです。

一方、ユーロ/米ドルについては、もともと1.12ドル割れの水準で一旦底入れ&反発しやすい状況にありました。実際、先週24日には一時1.1186ドルまで下押す場面があったわけですが、同水準というのは2021年1月高値と5月高値のダブルトップが完成した後、テクニカル分析のセオリーから当面の下値の目安になると見られていた水準です。

もちろん、もう一段の戻りを試す可能性もありますが、当面は21日移動平均線の位置する水準まで戻れば精一杯といったところではないでしょうか。

なお、クロス円については「もともと11月初旬から全般に円高傾向が強まっていた」という点も再確認しておきたいところです。つまり、先週25日までの米ドル/円の上昇は主に米ドル高が主導したものということです。

ちなみに、ユーロ/円は先週末11月26日に非常に重要な節目として意識される128円割れの水準に到達しており、目先は一旦下げ渋りやすい状況にあると見られます。