ユーロ/米ドルは「雲」より下抜ける動きへ

前回のコラムで注目したのは、ユーロ/米ドルが「一目均衡表の週足『雲』を下抜けるかどうか」という点でした。

そして先週、ユーロ/米ドルはついに同水準をクリアに下抜ける格好となり、週末11月12日には一時1.1433ドルまで下押す場面がありました。

その結果、月足の一目均衡表においても「雲」を下抜ける動きとなってきております。この月足については今月末の終値時点でも「雲」より下方に位置するようになるのかどうか、引き続き見定めて行く必要があるでしょう。

いずれにしても、当面は1.14ドル処が意識されやすいと考えられ、仮に同水準を下抜けた場合には次に1.13ドル割れの水準を試す可能性さえあると個人的には考えます。

ユーロ売り・米ドル買いの動きが強まる背景

既知のとおり、足元でユーロ売り・米ドル買いの動きが強まっているのは、1つに欧・米の中央銀行が司る金融政策方針の違いに因るものであると考えられます。欧州中央銀行(ECB)は米連邦準備制度理事会(FRB)に比べて金融政策の正常化に及び腰であるように思われているということです。

むろん、足元でドイツの新型コロナウイルス新規感染者数が急増している状況などを考えると、ECBの判断は妥当であり、そうした感染拡大の状況自体が一段のユーロ売りを誘っているということもあるでしょう。

また、足元で俄かに米国のインフレ進行が長期化するという市場の見方が強まり、それによって米ドル買いの勢いが増しているということもあります。

大きかったのは、先週11月10日に発表された10月の米消費者物価指数(CPI)の予想以上に強い結果でした。前年同月比+6.2%という31年ぶりの強い結果は、さすがに衝撃的なものと市場では受け止められた模様です。

「100年に1度」などと言われるバンデミックの痛手から立ち直ろうとする局面にあっては当然の現象とも思えるのですが、いきおい市場で米国の早期利上げ観測が盛り上がりやすくなっていることも否定できない事実です。

結果、11月10日の米ドル/円は1日で1円超の上昇を演じることとなりました。ただ、それは前日9日に一時113円割れの水準まで大きく値を下げる場面があったためでもあります。

同日は米10年債利回りが一時1.41%台まで低下する場面もあり、これは少々不可解な動きでした。なにしろ、同日発表された10月の米生産者物価指数(PPI)は事前の予想に違わぬ強めの結果でしたし、翌10日に発表予定であった10月の米CPIについても、以前からかなり強い結果が予想されていたのです。

ともあれ、この一時113円割れで市場にはドテン売りを仕掛けた向きがあると考えられ、それが米CPIの結果を受けて一気に巻き戻されたという部分もあったと推察されます。

米ドル/円が下落した要因とは

なお、10月9日に米国債利回りが低下して米ドル/円が下落したのは、1つに次期FRB議長を巡る市場の思惑が働いたためであると考えられます。

というのも、この日市場では次期FRB議長の人選について「現在のパウエルFRB議長よりもブレイナードFRB理事の方が有力との見方が浮上している」との話題が盛んに取り沙汰されていたのです。

市場にはブレイナード氏を「ハト派寄り」と見る向きが多いようで、仮に同氏が指名された場合は、改めて市場で米国債利回りの低下と米ドル売りの動きが生じる可能性もないではありません。

ただ、仮に次期FRB議長にブレイナード氏が指名された場合には、必ずしもハト派寄りではなく、より「現実的」な政策運営に徹すると見ておくのが妥当でしょう。

前回のコラムでも述べたとおり、10月の米ドル/円の月足は月末終値で一目均衡表の月足「雲」を上抜けて「三役好転」のパターンを完成させました。よって、当面は月足「雲」上限が下値サポートして意識されやすく、さらに強めの米指標の結果が出てくれば、改めて10月高値=114.70円から115円台乗せを試す動きになる可能性もあると見ます。

ちなみに、今週は11月16日に10月の米小売売上高の発表が控えています。