私が長年提唱し、自らも実践している投資手法は、長期分散投資です。

短期売買による収益の積み上げや、1つの銘柄に集中するのではなく、分散された投資対象に5年から10年単位で資金を投じていく方法です。

「大数の法則」に基づいて勝率の高い取引を継続する

資産運用は短期より長期で行う方が成果は出やすい。その理論的な根拠は「大数の法則」にあります。

大数の法則とは、回数が増えれば増えるほど、その確率が本来のものに近づいていくと言う法則のことです。

例えば、コインの表が出るか裏が出るかの確率は2分の1ですが、1回だけなら表か裏か、つまり0か1と言う結果になってしまいます。

ところが、投げる回数を100回、1,000回、10,000回と増やしていけば、表と裏の回数は本来の確率である2分の1に近づいていきます。10,000回すれば、おそらく4,950回から5,050回位の間に収まり、ほぼ本来の確率である2分の1に収まります。

長期投資とは、短期の取引の集合体

株式市場は経済成長と共に長期的には右肩上がりになることが期待できます。平均すれば値上がりする確率は、値下がりする確率よりも高くなります。

株式を長期で保有するという事は、毎日買ったものを翌日売って、また買い直すことを繰り返しているのと同じです。

長期保有とは、1日の所有の連続と考えることができるのです。

10日間株式を所有していれば、1日の所有を10回繰り返していることになります。

株式市場が60%の確率で上昇するとすれば、大数の法則によって、長い期間所有すれば勝てる可能性は、本来の確率の60%に近づいていくことになります。

1日だけ所有すれば上がるか下がるか分からなくても、100日、1,000日、10,000日と長期で運用すれば勝てる可能性が高まっていくのがわかると思います。

分散投資では、相関係数が低いものを組み合わせることが重要

長期投資と並び、投資の成功に必須なのが、分散です。

投資対象を分散させることでリスクを抑える(変動率が下がる)ことが可能になります。しかし、そのためには、相関係数の低い資産を組み合わせる必要があります。

分散効果は、値動きの異なる(相関係数がゼロに近い)資産を組み合わせることにより高めることができます。

例えば、日本株式だけで銘柄分散させても、日本の株式市場全体が下落すれば、分散効果は限定的です。日本株と米国株に分散させても、相関係数が高いので分散効果が限定されてしまうのです。

そこで、金融資産と実物資産を組み合わせることが意味を持ちます。

金融資産に実物資産も組み合わせると分散効果が高まる

実物資産とは、不動産に代表される実体のある資産を指します。

2つの資産は値動きに相関があまりないため、組み合わせることでポートフォリオ全体の変動率を抑えることができるようになります。

ただし、2つの資産をどのような比率で組み合わせるかは、個人差があります。

一般的には、年齢が高くなると値上がり益(キャピタルゲイン)よりも年金のような定期的な収入(インカムゲイン)に資産運用の重点の置き方が変わっていきます。

そのため、若いうちは値上がりが期待できる株式のような投資対象に投資信託やETFなどを通じて分散投資を行い、年齢が高くなるにつれて、安定した定期収入が得られる不動産のような実物資産の比率を高めていくのが良いでしょう。

今回の解説で、長期で分散して投資していくことが、個人投資家にとって、誰にでも実践できる優れた投資法だということがおわかりいただけたと思います。