ビットコインが堅調だ。今月に入って2週間余で30%以上上昇し、4月につけた過去最高値まであと7%に迫っている(15日15時時点、図表1)。もう一つの有力通貨であるイーサリアムも同様だ。そろそろ上がり過ぎの声も聞かれるが、ここからの上値はあるのだろうか。

 

過去半年の振り返り:足元の上昇の理由は?

ビットコインの過去半年の乱高下は相変わらず凄まじかった。まず、4月の高値から3ヶ月で半値になった。主因は、1)個人投資家の過熱の揺り戻し、2)中国等の規制強化、3)一部企業の慎重姿勢、の3つだった。

昨年末以降、機関投資家と、個人投資家の投資意欲が相まって、ビットコイン価格は半年で6倍近くに跳ね上がった。しかし4月以降には、流動性相場終焉への懸念や、「ビットコインの価値は将来ゼロになりうる」(英金融当局)などといった欧米規制当局のたび重なる警告で巻き戻しが生じた。

また、いくつかの当局が暗号資産に対する規制強化を発表したことも相場に水を差した。6月には世界最大級の暗号資産業者バイナンスが英国で事業を禁止された。同月、国際金融規制を統括するBIS(Bank for International Settlement)が金融機関が保有する暗号資産に厳しいリスクウェイト(1250%)を課すと発表した。とどめは中国だ。段階的に暗号資産事業者の取り締まりを強化し、9月には全面禁止に至った。事業法人サイドでは、5月に、市場の火付け役だったテスラが、車購入のビットコイン決済を開始からわずか2か月で停止したことも市場心理に大きなダメージを与えた。

ところが、10月に入ってから大きく様相が変わった(図表2)。きっかけは再び規制関連だった。9月30日にはパウエル米FRB議長が、10月6日にはゲンスラーSEC委員長が、「暗号資産を(中国のように)禁止するつもりはない」と相次いで表明した。同時期に、ビットコイン関連会社株等に投資するETFが米国で初めて承認された。 

また、新興国ではエルサルバドルが9月7日に、米ドルに加えてビットコインを法定通貨とした。これは小国の極端な事例だ。しかし、その後、ブラジルでも同様の可能性があると報じられた。米テキサス州も、10月、商法に「暗号資産」という用語を初めて記載し、その取引を法的に認めた 。

 

因みに日本では暗号資産関連の法制に大きな変化はない。が、周辺の動きとしては、今年3月からデジタル証券の発行(Security Token Offering)がスタートしており、対象資産は、クレジットカード債権から、社債、不動産へと広がりつつある 。暗号資産市場と直接関係はないが、デジタル市場全体の発展の動きとして注目される。

バリュエーション:ビットコイン価格の予想は可能なのか

依然として、暗号資産の理論価格は不透明だ。ただ、取引開始から10年余りが経ち、ビットコインの価格に影響を与える要素が一定程度見えてきた。

かつて価格の説明に使われていたネットワーク効果については、最近は説明力が低下している。利用者数等で企業価値を判断する手法は、例えばアプリの評価など、利用者の取引金額に大きな差がない場合は有効だ。ところが、昨年後半から機関投資家が参入し始めたため、大口口座の動向が価格により大きな影響を与えるようになってきた(図表3)。引き続き金融市場にマネーが溢れていることや、社債等の伝統的な市場に恒大問題等の不安が漂っていることなどから、こうした機関投資家の動きに衰えの兆しはまだ見えない。

もう一つ、価格を予想する指標として最近注目されるのは、規制や新商品など多様な要因から価格を予想するマルチファクター分析である。とりわけ、longforecast.comが提供するビットコイン価格予想は、今年3月時点で、年中盤の下落を見通しており、その下値レベルもタイミングも概ね的中した(図表4)。計算の詳細が開示されていない上、足元でやや強気すぎることから補正は必要であるものの、この予想を参考にすれば、年末までに過去最高値の6.3万ドルを超える可能性は十分あるだろう。

 

当面のイベント

来週は特に注目が高いイベントが控える。週明け18日と19日(現地時間)に、それぞれプロシェアーズ、インベスコのビットコイン先物ETFについて、米SECが承認の可否を示す 。これまでSECは、全ての暗号資産関連ETFの承認を見送ってきた。ボラティリティや流動性リスクなどが大きく、投資家保護が図られていないことなどが理由だ。今回仮に承認されれば、ビットコイン関連ETFとしては米国初となる。

これらの先物ETFは、現物ETFとは異なり投資信託の規制に則っており、投資家保護ルールを相応に満たしている。このため、14日の報道ではこれらは承認される可能性が相応に高いとみられている。

もっとも、承認のニュースが出ればSell the factで一旦ビットコイン等は売られる可能性があるだろう。それでも今回は、市場に新たな参加者を誘導することになると思われることや、次のステップとして現物ETFの承認への期待があることから、下げ幅は限定的となるだろう。(因みに、承認待ちの暗号資産現物ETFは現在10件以上あるが、こちらの承認にはまだ時間がかかるとみられる。)

また、年末までには、イーサリアムの大規模更改版「イーサリアム2.0」がローンチされる予定である。PoSと呼ばれるアルゴリズムに変更することで、暗号資産の課題である電力消費量を99%以上削減できる見込みだ。これに向けたアップデートが27日に予定されている。今後は、エコフレンドリーな暗号資産として、ビットコイン以上にイーサリアムが注目を集める可能性もある。

なお、マネックス証券のウェブサイト「ビットコイン(BTC)最新動向と相場予想」では、毎週暗号資産の市場動向に関する情報を発信している。こちらも合わせてご参照ください。