動かぬ米ドル円相場と膠着の米長期金利

8月の米ドル円相場は110円を挟んで上下1円幅程度の値動きに留まり、エネルギーを溜め込んでいるようです。足元の米ドル円相場が膠着している理由は、米長期金利(米国10年債利回り)が1.2~1.3%の間を行き来するだけでトレンドを失っているためでしょう。

必ずしも米ドル円相場が米長期金利と相関するわけではありません。しかし、コロナ禍の金融大緩和の影響からインフレ警戒が強まる中、米国の金融政策の転換が模索されているため、2021年の為替市場は米金利への関心が強く、相関が強まっていると考えられます。

では、米長期金利が動き出すきっかけは何でしょうか?

大注目の9月FOMCドットチャート

すでにマーケットは米連邦準備制度理事会(FRB)のテーパリング着手を織り込んでいます。市場の次のテーマは、その先の米国の利上げ開始時期になります。

9月22日の米連邦公開市場委員会(FOMC)ではFOMCメンバーのドットチャート(政策金利見通し)が発表されるため注目度が高く、膠着状態にある米金利が大きく動くかもしれません。

FOMC後の値動きはトレンドとなるか

なお、前回6月のFOMCではドットチャートの予想分布が大きく変化し、2023年に0.25%の利上げが2回あることが示唆されました。それまでのコンセンサスであった2023年末まで利上げなし、という予想はわずか5人と少数派となりました。

また、2022年内の早期利上げを想定するメンバーが7人に増えたことがサプライズとなり、直後、米長期金利は急伸、日米の株価も大きく売り込まれる局面がありました。

しかし、金利急上昇は一時的なものに終わり、その後米長期金利は7月に向けて下落を続けました。米国株はFOMC後の急落が絶好の買い場となり、再び史上最高値を更新するトレンドへと回帰しています。

9月のFOMCで利上げ開始時期の平均予想が2023年に2回よりもタカ派的となれば、米長短期金利が大きく変動し為替市場が大きく動く可能性は十分に考えられますが、直後の反応が継続してトレンドになるかどうかはわかりません。

次の市場の注目はニュージーランドの利上げ

9月のFOMCの結果を受けた後、市場は米国以外の中央銀行の金融政策を材料に動き出す可能性もあります。

ニュージーランドドルの動向をみると、10月6日の金融政策会合での政策金利引き上げが織り込まれているようです。RBNZ(ニュージーランド準備銀行)が、2021年内に2回の利上げを実施するとの予想も出てきています。

こうした予想はすでにマーケットには織り込まれていると見られます。ただ、9月22日のFOMCを受けて急激な米ドル高となりニュージーランドドルが大きく売られる局面があれば、ここを好機と見てニュージーランドドルを買いたいと思う投資家は多いかもしれません。