投資部門別売買動向によると、海外投資家は9月第2週(6~10日)に日本株を現物・先物合計で1兆547億円買い越した。買い越しは3週連続で2020年11月以来およそ10ヶ月ぶりの高水準。3週間での買越額は2兆円を超えた。衆院選・与党勝利と株高の関係性は周知の事実だが、外国人投資家も当然それを理解している。

今日(9月17日)は自民党総裁選の告示である。候補者が出そろい、政策論争がさらに高まるものと期待したい。昨今の株高は政策期待がその要因のひとつであるからだ。

各候補の主張を見ると、いずれも積極財政、金融緩和継続は変わりがないが、当然、トーンに濃淡はある。物価安定目標2%の達成まで基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化目標を凍結し、積極的な歳出拡大を続けるべきだと主張する高市早苗前総務相の「サナエミクス」が最右翼とすれば、国民の人気が高い河野太郎行政改革担当相はグリーン政策ばかりが目立ち、他は比較的おとなしめである。経済対策については、「規模感はもう少し研究したい。」金融政策については、「インフレ率はスタートでなく経済成長の結果。2%物価目標の達成はかなり難しい。金融政策は日銀にある程度任せる必要。日銀はしっかりと市場と対話を」と述べ、財政政策に関しては、「基礎的財政収支の扱いに関してさまざまな議論が必要」とする一方、「有事の財政出動は避けられない」としている。金融所得課税については、税率の一定程度引き上げなどの対応を検討と述べた。これだけをみると、あまりマーケット・フレンドリーとは思えない。

それでも市場が走っているのは、誰が総裁・首相になってもコロナで落ち込んだ経済を回復させるのが最優先課題になるのは避けられないので、どう転んでも大規模な景気対策が打たれるからだ。重要なのは今回の総裁選びは衆院選だけでなく、2022年の参院選も意識したものになる点だ。コロナ対策は言うまでもなく、来年の景気・株価浮揚も念頭に置いた政策をここでアピールする/できる人が自民党総裁に求められている。

外からの圧力もある。国民民主党が15日に発表した衆院選に向けた重要政策は、積極財政への転換を掲げた。「まん延防止協力金」として全国民に10万円、低所得者には20万円を給付。消費税を時限的に5%へ減税。マイナンバーと銀行口座をひも付け、給付付き税額控除と給付金を合わせた「日本型ベーシックインカム(仮称)」を創設することを盛り込んだ。僕は特定の政党を支持していないが、国民民主党のこの政策は広く歓迎されるだろう。問題は、こうしたポピュリズム的政策を野党が掲げてきたときに、自民党としてどうするのか、ということだ。国民の人気の高い党首を選びました、だけでは国政選挙は勝てないだろう。

よって、積極財政の議論はエスカレートしてくるだろう。一段の株高要因になると思われる。
河野さんの発言の中で、僕が注目したのは以下の点だ。

労働分配率を一定水準以上にした企業に法人税の特例措置を設ける
アベノミクス、賃金まで波及してこなかった部分がある
企業から個人を重視する経済を考えたい

これは一見すると、企業に不利なように感じられる。しかし、昨今の市場の流れは無形資産、中でも人的資産の価値の高い企業が好パフォーマンスをあげている。労働分配率の高い企業がリターンも高いという実証結果も僕自身の分析で得ている。この数年間、時価総額を伸ばした企業はキーエンスやソニーなど、従業員の年収の高い企業であることを考えれば、直感的にも理解できるだろう。

これは新しい銘柄選択の基準になると思う。この点について分析を進め、ストラテジーが完成したらまた報告させていただきます。