為替の動きが個々の企業に与える影響

前回のコラムでも書きましたが、為替の値動きは株式や債券などの他の市場とも互いに大きく影響し合っています。もちろん相場だけではなく個々の企業、業界そして経済全体にも影響してきます。

米ドル/円が米ドル安円高に動くときを例に、日本国内の輸出企業と輸入企業が受ける影響を考えてみましょう。

(例)1米ドル=100円が1米ドル=90円になった場合

輸出企業:10,000米ドルの品物を輸出
1米ドル=100円のとき:1,000,000円の受け取り
1米ドル= 90円のとき:900,000円の受け取り
日本円での受取り金額は10万円減ってしまう

輸入企業:10,000米ドルの品物を輸入
1米ドル=100円のとき:1,000,000円の支払い
1米ドル= 90円のとき:900,000円の支払い
日本円での支払い金額は10万円安くなる

米ドル安円高のときは、日本国内では輸入企業の方にメリットがあるということですね。こうした為替の動きは個々の会社の売り上げに大きく影響するため、そのまま企業の株価に影響してきます。

貿易収支と為替の関係

日本はかつて自動車などの輸出額が多い貿易収支における黒字大国で、そのために貿易摩擦が起き、貿易黒字縮小のために通貨レート切り上げの圧力がありました(1985年プラザ合意)。貿易黒字によって円高圧力を招いてしまうという時代もあったのです。

貿易収支は、ここ数年は貿易赤字が続いてますが、2020年は3年ぶりに年間黒字となりました。とは言え、かつてのような大きな黒字ではありません。

貿易収支については、一般的に貿易黒字は輸出超過のときはGDPの押し上げ効果があると言われます。

為替への影響としては輸出超過の場合、受け取り外貨の方が多い、つまり日本円に戻す円買いが増えるため円高になりやすいと考えられます(上述の他国による円高圧力とは関係ありません)。

ただ、これらはどの通貨建ての取引をしているのか、売り上げの外貨を全て円転しているのか、など各企業の戦略により異なります。また、現状は収支が赤字の年も黒字の年もその差額が特に大きいわけではないので、貿易相手国というのがどこの国の事情によるものなのかなど、その取引の中身や今後への影響の方に市場は注目しています。
ちなみに、2019年の貿易収支赤字は中国向け輸出の落ち込みが大きな原因でした。

貿易相手国など各国の経済状況も重要な情報

自国の貿易相手国の経済状況はどの国にとっても大きな影響があります。例えば資源国であるオーストラリアの最大の貿易相手国は中国ですが、中国経済が減速するとオーストラリア経済も当然大打撃を受けます。

それと同時にオーストラリアドルのレートも下がる、という連動があり、オーストラリア関連の株式、投資信託、オーストラリアドルのFX、などにも影響が及びます。

また、中国経済の減速がオーストラリアと取引のある日本企業の株価下落につながる、というように直接ご自身が海外株式や為替の取引をしていなくとも自分の保有資産に影響してくることも大いにあるのです。

それだけにどのような投資をしていても、日本だけではなく、各国の経済状況のニュースは注意して見ておく必要があります。

せっかく世界経済にアンテナを張るのであれば、外貨を含めて投資先を広げてみてはいかがでしょうか。そうすることによりご自身の資産のリスク分散にもつながっていきます。