前回の記事では親子上場の解消が進んでいることをご説明しました。要旨は以下の通りです。

・東証の市場改革などもあり、親子上場の解消が進んでおり、親会社による子会社の買収などが目立っている
・日本株は資産面から見て割安な個別株が多い
・上記のような個別株が買収対象になった場合、高値で買われる(プレミアムがつく)場合が多い

上記3点を踏まえ、どのような親子上場会社の例があるか…を見ていきました。前回は特に親子上場が多い商社の例をご紹介しましたが、他にはどのような企業があるでしょうか。

言うまでもなくグループ戦略は企業によって大きく異なりますので、個別の企業については過去のM&Aの動きを確認すると良いヒントになりそうです。なお、以下で取り上げるものは、先週末時点(2021年5月28日時点)でPBRが1倍を割っている銘柄です。例えば過去の買収例として前回取り上げた、ながの東急百貨店、山陽百貨店と同種の銘柄で、親会社が近鉄グループホールディングス(9041)の連結子会社である近鉄百貨店(8244)がありますが、同社はPBRが3倍を超えているので取り上げていません。

再編の可能性が見込まれる!?親会社の規模が大きな親子上場の例

まずは特に親会社の規模が大きな銘柄群を見てみましょう。積水化学工業(4204)は時価総額9000億円の大手化学品メーカーですが、グループ会社の積水樹脂(4212)と積水化成品(4228)が上場しています。いずれも20%強と限定的な持ち分ですが、積水樹脂・積水化成もそれぞれ約3%の株式を持ち合っており、再編する可能性がありそうです。

3社の規模と株式の割安性は以下の通りです。積水化成品は前期決算がイマイチでしたので、PERが高く出ていますが、資産面から見ると、両社とも積水化学に比べて割安に評価されていることが分かります。たとえば積水化成品の場合、現在の時価総額280億円の2倍の株価で買収しても560億円です。一方、積水化成品の株主資本は680億円あるので、帳簿上はプラスになります。実際は既に保有している株式があるので、買収金額はより小さくなります。

【図表1】積水化学・樹脂・化成品の規模・株価指標
出所:最新の決算時点の数値を元に筆者作成

凸版印刷(7911)の子会社であるトッパン・フォームズ(7862)も上場しています。こちらは両社ともPBRが1倍を割っており、割安です。両社ともここ数年間の売上高が減少基調です。トッパンはリクルート株の売却などで2020年3月期に3000億円だった現金等が2021年3月期には5000億円に膨れており、買収余力が大きい点は注目できるかもしれません。

トヨタ自動車(7203)もトヨタ紡織(3116)、豊田自動織機(6201)、豊田合成(7282)といった上場子会社があります。自動車の系列には割安な企業も多く、日産自動車(7201)系の日産車体(7222)はアクティビストが投資しています。エイチワン(5989)はホンダ(7267)系です。

鉄鋼業界に目を向けると、山陽特殊製鋼(5481)は日本製鉄(5401)が過半の株式を保有しています。東北特殊鋼(5484)は大同特殊鋼(5471)が3割強の株式を保有しています。

コカ・コーラジャパン(2579)は北九州コカ・コーラと山陽コカ・コーラが合併したコカ・コーラウエストに三笠コカ・コーラ、近畿コカ・コーラ、四国コカ・コーラ、南九州コカ・コーラなどが合流し、さらに関東のコカ・コーラ(東京コカ・コーラ、三国コカ・コーラ、利根コカ・コーラなどが合併)と統合した全国規模のコカ・コーラの販売会社です。このうち、三笠・近畿・四国・三国といった企業は上場していました。そのため、かつてはコカ・コーラの上場会社が多数ありましたが、今はジャパンと北海道コカ・コーラ(2573)だけになっています。北海道コカ・コーラは大日本印刷が過半の株式を保有しており、こちらも再編の可能性がありそうです。

先ほど近鉄百貨店(8244)はPBRが3倍を超えている…と述べましたが、同じ近鉄系の企業でも近畿車輛のPBRは低水準です。

総合商社の一角であったトーメンは豊田通商(8015)と2006年に合併しました。トーメンの子会社で上場していたトーメンエレクトロニクスは豊田通商により公開買付され、現在は合併を経て、ネクスティエレクトロニクスという会社になっています。一方、トーメンデバイス(2737)は上場を続けており、興味深いところです。

注目したいリース業界の再編

既に存在しなくなった親会社の社名を冠していた企業と言えば、興銀リースを思い出します。同社も再編の対象となり、現在はみずほリース(8425)になっています。みずほリースはさらにリコーリース(8566)に出資しています。リコーリースにはリコー(7752)も出資しており、やや複雑な関係です。

【図表2】リコーリースの資本関係
出所:筆者作成

リース業界では再編が続いており、三菱UFJリースと日立キャピタルが合併して三菱HCキャピタル(8593)が誕生しています。これは日立のグループ再編に伴うものですが、リース業界の再編はまだあり得ると考えられますので、今後注目したいところです。

その他の企業の再編見通しなどを次回、確認していきましょう。