米ドル高値更新に向かうのか?=6月の最大テーマ

今週から6月に入ります。そこで今回は、米ドル/円を中心に6月の為替予想について考えてみたいと思います。

その米ドル/円は、先週後半から、それまで約1ヶ月も続いた108.5~109.5円中心の小動きを上抜け、一時110円台に乗せるところとなりました(図表1参照)。長く続いた小動きを米ドル高方向に抜けてきたわけですから、目先はさらなる米ドル高を試す展開が続きそうです。ではその中で、3月末に記録したこの間の米ドル高値、110.9円の更新に向かうかが、6月の米ドル/円を考える上での最大のテーマになりそうです。

【図表1】米ドル/円の日足チャートの推移 (2021年1月~)
出所:マネックストレーダーFX

そんな米ドル/円は、最近も日米金利差と基本的に連動した展開が続いています(図表2参照)。そしてその金利差の主役は米金利。その意味では、この6月に、米ドル/円がこの間の高値更新に向かうかは、米金利上昇がどこまで再燃するかがやはり大きな鍵になるのではないでしょうか。

 【図表2】米ドル/円と日米金利差 (2021年1月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

その米金利は、たとえば長期金利の指標である米10年債利回りで見ると、上述のように米ドル/円がこの間の高値を付けたのとほぼ同じタイミングで急騰が一服し、その後は好調な景気指標の結果に対する反応も限定的で、上げ渋る展開が続いてきました。これは、金利の「上がり過ぎ」が主因ではないかと私は考えてきました。

米10年債利回りの90日MA(移動平均線)からのかい離率は一時プラス50%以上に拡大、記録的な「上がり過ぎ」を示すところとなりました(図表3参照)。米金利上昇が行き過ぎたものとなれば、景気指標の好調な結果といった本来的には金利上昇要因とされる材料に対しての反応も鈍く、限定的なものとなるのは当然でしょう。

【図表3】米10年債利回りの90日MAからのかい離率 (2010年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

こういった中で、ピークで1.7%を大きく上回るまで上昇した米10年債利回りは、一時は瞬間的ながら1.5%を割れるまで低下しました。そして、このように米金利が上げ渋り、時に大きく低下する中で、米10年債利回りの90日MAからのかい離率も、先週は5%程度まで縮小しました。

過去3ヶ月の平均値である90日MAを大きく上回る動きは、相場の上昇が短期的に行き過ぎていることを示しています。そしてそんな相場が90日MA近くまで戻ってくるということは、90日MAとの関係では「上がり過ぎ」が是正され、ほぼニュートラルな状況になっていることを示しています。

とくに4月頃から、好調な米景気指標などの結果に対しても、米金利上昇の反応が鈍かったのは、「上がり過ぎ」が主因だっただろうと私は考えてきました。では、そんな「上がり過ぎ」が是正されたら、これからは米景気指標の好調な結果やインフレ懸念を示すような本来的には金利上昇要因とされる材料に対して素直な反応となり、米金利上昇が再燃することになるでしょうか。

その可能性はもちろんあるでしょう。とくに今週は、金曜日の米5月雇用統計など注目度の高い米景気指標発表予定が相次ぎ、それらの多くは前回より良い数字が予想されているようですから、それが米金利上昇をどこまで再燃させるかは注目されるところでしょう。

ただ少し気になるのは、大きく行き過ぎた動きの修正局面が、予想以上に長く続いたデータもあるということです。今回のように、90日MAを30%以上上回ったのは、2010年以降ではこれまで3回ありましたが、この3回では、「上がり過ぎ」修正で金利が低下に向かうと、一転して90日MAを10%以上下回る動きとなりました(図表3参照)。

以上のことが示唆しているのは、大きく上がり過ぎた動きの修正局面は、予想以上に長く続いたということでしょう。かりに今回もそうなるなら、米10年債利回りは足元で1.5%まで上昇してきた90日MAを10%程度下回るまで、低下ないし上げ渋りが続くことになります(図表4参照)。その意味では、米金利上昇の再燃はまだ先ということになるでしょう。

【図表4】米10年債利回りと90日MA (2020年1月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

図表5は米ドル/円と金利の相関係数の推移です。これは係数がプラスだと「正の相関」、つまり同じように動いている意味であり、係数がマイナスだと「負の相関」、つまり逆の動きになっているといった意味です。

これを見ると、米ドル/円は米金利及び日米金利差と、2021年に入ってから一貫して「正の相関」が続いていることがわかります。一方で、図表6はユーロ/米ドルと金利の相関係数ですが、こちらは5月に入ってから米金利と「負の相関」に転じ、独金利との「正の相関」が続いています。

【図表5】米ドル/円と金利の相関係数 (2021年1月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成
【図表6】ユーロ/米ドルと金利の相関係数 (2021年1月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

 

4月初めで、米金利急騰が一段落し、以後はボラティリティー(変動率)自体低下する中で為替相場への影響力も相対的に低下、とくにユーロ/米ドルなどは独金利の影響力の方が大きくなっているようです。そういった中でも、米ドル/円は米金利との基本的な「正の相関」が続いているようです。

米ドル/円は米金利次第といった基本構図が変わらないなら、この6月にこの間の高値を更新、111円を超える米ドル一段高が起こるかは、米金利上昇がどこまで再燃するかが最大の鍵ということではないでしょうか。