2021年5月15日の全国投資セミナーで、新興国株ETFについてご質問をいただきましたが、お答えすることができなかったので、この場でお答えしたいと思います。

先進国の株価に出遅れる今年の新興国株

先進国の株価指数であるMSCIワールド指数(米ドル建て)は年初から9.41%上昇しています。一方、新興国株指数を代表するMSCIエマージング・マーケッツ指数は年初から3%の上昇で、先進国株価指数に6.4%出遅れています。

【図表】エマージング・マーケットと先進国株価指数 2021年の推移
出所:ブルームバーグよりマネックス証券作成。 米国ドル建て。 2020年12月31日を100として指数化

エマージング・マーケッツの国の配分を見てみますと、上位5ヶ国では中国35%、台湾13%、韓国13%、インド10%、ブラジル5%となっています。これらの5ヶ国の中で最も上がっているのは台湾で年初から11%(以下全て国のパフォーマンスはMSCI国別指数)上昇しています。新型コロナウイルス感染者数が激増して大変なことになっているインドの株価指数は実はドル建てで9.54%上昇しており、ドル建てで-0.18%の日本株(MSCIジャパン指数)以上に上がっているのです。

では、上位5ヶ国でどの国が足を引っ張っているのかと言うと、中国は-2.4%、韓国、ブラジルがそれぞれ-0.6%、-1.14% といったこところです。国の配分の大きなところが下がっているため、指数全体にマイナスの影響を与えています。

一方、先進国株価指数を見てみますと、年初から9.72%上昇している米国株の配分が64%を占めており、恩恵を受けています。

それぞれの業績はどうかと言いますと、2021年の先進国のEPSは33.6%の伸びに対し、新興国のEPSは50.7%伸びると見られています。2022年についてはそれぞれ10.8%、11.4%の増益予想です。

一方、PEレシオを見ますと、2021年の先進国は約20倍、新興国が14倍ですが、2022年になると先進国は約18倍に対し、新興国は約13倍まで下がってくる見通しです。

新興国株の上昇はポスト・ワクチン経済とテクノロジーセクターの株価回復次第

新型コロナワクチンの配布が遅れている新興国ですが、先進国でのワクチン接種が進むと次は新興国となるでしょう。ですから、経済の回復も先進国の回復のパターンを見ていれば次に新興国の経済がどうなるか、ある程度判断することができるでしょう。これは時間の問題と言えるのではないでしょうか。

また、ナスダック市場を見ていると分かるように、テクノロジーセクターのパフォーマンスが芳しくありません。実はこれは新興国でも同じような状況なのです。MSCIの先進国指数に占めるテクノロジーセクターの割合は約2割ですが、新興国でもほぼ同じく2割を占めており、先進国のテクノロジーセクター銘柄の下げは、新興国の株式市場にも同じような影響を与えています。

因みに新興国の35%を占める中国では、テクノロジーセクターが3割を占めており、テクノロジーセクターの株の弱さが株価指数を下げているのです。サムスンに代表される韓国でも同じような状況です。

新興国の経済回復は先進国の後、売られ過ぎたテクノロジーセクターの回復次第であり、それは時間の問題ではないでしょうか。

出遅れている新興国株のETFに今投資し、先進国へのキャッチアップ・ラリーを今から待ち伏せするのも悪くないかも知れません。

(参考新興国株ETF)
●iシェアーズMSCIエマージング・マーケットETF(EEM)(連動指数はMSCI TRエマージング・マーケッツ・インデックス)  
●バンガードFTSEエマージング・マーケッツETF(VWO)(連動指数はFTSEエマージング・マーケッツ・インデックス)