中国のトップニュースとしては河南省で一人っ子政策の緩和が決定されたことでしょう。もっとも、中国では1970年代から一人っ子政策が実施されていたわけですが、実は2002年までに一人っ子同士の場合の第2子の出産は河南省以外では認められていました。今回、河南省で認められたことで、中国全土で一人っ子同士の場合の第2子の出産が容認されたことになりますが、他の省では既に認められておりましたので、今回の河南省での認可自体による中国経済への大きなインパクトはありません。しかしながら、このように徐々に一人っ子政策を緩和していくことによって、人口を抑制しながら長期的な成長を継続できるようにするのは中国の国家戦略であって、今回のニュースでそのことが認識されたことは、長期的なビジョンで中国株を考える場合には、支援材料となりえるでしょう。
一方、株式市況の方は引き続き調整局面が続いています。11月18日に中国財務部より発表になった1~10月の国有企業の業績ですが、利益総額は前年同期比16.0%増と、1~9月の19.4%増よりも大きくスローダウンとなり、10月単月では初の減益となりました。また、11月のHSBC中国製造業購買担当者指数(PMI)の速報値は48.0と、前月の51.0から大幅に下げています。厳しい金融引き締めと、海外市況の悪化により、中国経済のスローダウンは明らかであり、当面はこのままスローダウンが続くと見られます。
市場の関心は、中国政府の金融政策の微調整がどのような形で進むかということですが、今のところ材料らしい材料は出ておらず、その結果として本土A株市場は下落を続けています。国務院発展研究センターの研究員が、2012年の中国のGDP成長率は8.5%、消費者物価指数の上昇率は4.5%前後になる見通しであることと、「経済政策全体の方向性を変えるべきではなく、物価の制御と安定した成長の達成を引き続き目指すべき」とコメントしたことが国営の新華社通信で伝えられました。
これは中国政府が金融引き締め策は当面変更がない(但し微調整はある)ということを伝えようとしているのではないかと思います。やはり、相場にインパクトを与えるほどの金融緩和政策が出るようになるまでには、半年~1年ほど時間がかかるのではないかと思われます。ただ、10月の消費者物価指数の前年同月比の上昇率は5.5%であり、近い将来前述の4.5%を大きく割り込んでくるようになると、市場心理は大きく変化する可能性がありますので、引き続き消費者物価指数の動きには注目です。
また、欧米市場を見てみると、こちらは引き続き欧州のニュースフローによって大きく左右される相場展開が続いています。先週、米国ではサンクス・ギビング(感謝祭)のホリデーシーズンが始まり、クリスマスショッピングの開始を告げるブラックフライデー(金曜日)では、ネット及び実物(百貨店など)のショッピングスペースとも、2010年以上の旺盛な買い物が見られました。
しかし、相場を左右しているのは欧州からのニュースフローであり、先週は「ドイツ国債大型入札、35%が応札なく不調に終わる」、「ハンガリー国債にジャンク債格付け&ベルギー国債の格下げ」といったニュースで株式市場は大幅に下げました。このように中国でも欧米でも株式市場の下落が続いている中で香港市場も調整が続いています。引き続き、政策転換を待ちながら、買い場を探る展開が続いていると言えるでしょう。