直近の価格動向

J-REIT価格は、株式市場と同様に3月上旬に下落した後、中旬に反発する動きとなった。

東証REIT指数は、3月18日に2020年3月のコロナショック後の高値となる1,997ポイントまで回復。またコロナショック後としては、初めて7営業日連続(3月16日から本稿執筆時点の3月24日まで)で1,950ポイント以上にて推移している。

J-REIT価格は2月中旬から株式市場に連動する動きであったが、3月19日以降は異なる動きを示している。株式市場の下落は、日銀の株式ETFの買入れ方式の変更の影響とも考えられる。

しかし株式市場とJ-REITの価格動向が異なっている点は、今後も注視すべきであろう。市場に対し、過剰の資金が供給されている状況は変化していないため、J-REITが受け皿となる可能性もあるためだ。

オフィス系銘柄の業績は堅調

また、時価総額が大きい銘柄が多く東証REIT指数への影響が強いオフィス系銘柄の業績予想が堅調な点は、今後のJ-REIT価格を上昇させる要因になりそうだ。

コロナショック後は物流系銘柄の価格上昇が東証REIT指数を支える状態が続いていたが、オフィス系銘柄の価格が安定して上昇すれば、2,000ポイントを安定的に上回ることになると思われる。

コロナ禍の影響で東京都心部のオフィスビルの空室率は高くなっているが、J-REIT保有物件は高い稼働率を維持している。

例えば、オフィス賃貸仲介大手の三鬼商事の調べによると、東京都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)では1月末時点で全体の空室率が4.82%(※1)となっている中で、港区の空室率は6.88%と最も高い。コロナショック前となる2020年2月末時点では、それぞれ1.49%と1.74%であり1年間で大幅に悪化している。

一方で「六本木ヒルズ森タワー」を含め、ポートフォリオの9割弱が港区内のオフィスビルを占める森ヒルズリート投資法人(証券コード3234、以下MHR)の港区内のオフィスビル空室率は1月末時点で0.4%となっている。

都心5区の空室率上昇に対し、MHRは「保有物件の立地やクオリティが優れている本投資法人については影響なし(※1)」と保有物件の競争力の高さを示している。

MHR以外でも大型オフィスを多く保有する銘柄は、比較的高い稼働率を維持する見込みとしている。

高い稼働率であってもテナントの入れ替えが生じれば、新規入居テナントに対してはフリーレント(※2)を付けた契約となるため、収益の低下は避けられない。しかし順次フリーレントは解消していくため、収益への影響は限定的になりそうだ。

また、オフィスビルの売買市場は高値安定の状態になっており、売却益を計上することで分配金の増加や維持も可能となっている。

オフィス系銘柄の懸念材料とは?

従って、景気回復が2021年中に明確になってくれば、オフィスビル系の収益回復期待がさらに高まることになりそうだ。ただし、景気回復に時間を要することなれば、オフィス市場全体の悪化がREIT保有物件に波及する可能性もある。

特に2023年には東京での大規模なオフィスビル供給が予定されているため、2022年の段階で空室率に改善の動きが生じていることが必要だ。大規模ビルの竣工前には、テナントを確保する動きが強まるためだ。

景気回復によるオフィス市況の回復は、現時点では「期待」でしかないため、オフィス系銘柄への投資は利益確定も視野に入れる必要があると考えられる。

(※1)2021年3月18日付森ヒルズリート投資法人「第29期(2021年1月期)決算説明会資料」25ページによる
(※2)入居時に賃料を一定期間無料とする契約のことを指す。空室率が悪化している時には、無料期間が長くなる場合が多い。