先週の香港市場も引きつづき欧州を巡る日々のニュースでアップダウンの非常に激しい相場になりました。先々週はギリシャ首相による国民投票発言とその回避で暴落&暴騰。そして先週はイタリアの国債利回り7%越えで暴落、しかし最後は緊縮財政法案可決に向けた動きと、伊・ギリシャ新首相による規律回復期待で米国株は金曜日に大幅上昇しており、暴落分を取り戻しております(今週の香港市場は大きく上昇して始まっています)。引き続き予測不能の材料ニュースによる一喜一憂でボラティリティーの高い相場が続いています。

材料は週替わりですが、何かの悪いニュースが出て暴落後、直ちにそれを打ち消す解決策や希望を抱かせる新しい動きが出て急反発、というパターンが続いているように見えます。あまり経済や業績に焦点があたりにくくなっており、当日の市場心理のみで相場が大変動しています。このような大きな動きが頻繁に見られたのがリーマンショックの頃で(今よりもっと振幅が大きいものでしたが)、その頃の状況と少しダブるようにも映ります。

一方、中国のニュースとして一番大きかったのは10月の消費者物価指数が前年同月比5.5%と、ほぼ事前予想通りの結果が出たことです。9月は6.1%増でしたから、インフレは確実に沈静化しており、今後も低下傾向となる可能性が高くなっているように見えます。その他の経済指標としては、10月の輸出が前月比7.2%減となっていたり、小売売上高の成長率が前年同月比17.2%増と、9月の17.7%増に比べて伸びが鈍化するなど、これまでの厳しい金融引き締め策や、欧米景気の停滞に伴って、中国経済がスローダウンしていることが示されました。現在の中国株にとっての重要ポイントは、いつ金融引き締めが緩和に転換するかです。緩和に転換されれば、公共投資などが勢いづき、業績を拡大する見通しの国営企業が多数あるからです。

もちろん消費者物価指数は未だに高い水準ですから、これが落ち着くまで、しばらく引き締め基調が続くことは間違いありません。しかし、インフレ率が明確な低下方向を示し、経済指標がスローダウンを示したことは、温家宝首相がコメントした金融政策の微調整が行われる余裕が出てきたということです。実際のところ、中国人民銀行(中央銀行)が公開市場操作を通じて金融システムに960億元を注入していたり、中小企業向けの支援策を行っていたりしています。もちろん、目に見えて株価に影響を与えるような政策が出るまでには、しばらく時間がかかると見られますが、徐々に薄日が差し込んできた状態のようにも感じられます。11月以降の消費者物価指数を注意深く見守りながら、投資のタイミングを図っていくのがよいと思います。