トルコリラの底打ち期待は消えたのか?

先週末の15円台から、週明けのトルコリラ/円は12円台へと大暴落するスタートとなった。きっかけは、3月20日に突如発表されたトルコ中央銀行総裁の解任である。ではこれにより、長く続いた下落トレンドが終わり、上昇トレンドへの転換の期待も出ていた動きは、「振り出し」に戻されてしまったのか。

それを考える上で、足元の52週MA(移動平均線)が位置する14.5円という水準に注目してみたい(図表参照)。経験的に、52週MAはトレンド判定で参考になる。具体的には、52週MAを「大きく」、「長く」ブレークするかが、一時的な動きか、それとも継続的、つまりトレンド転換に伴う動きかを考える上で参考になってきた。「大きく」の目安は5%、「長く」の目安は1ヶ月というのが基本だ。

【図表】トルコリラ/円と52週MA(2010年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

こういった中、トルコリラ/円は、1月末から2月にかけて、この52週MAを3週連続で上回った。これは、2014年から6年以上続いてきたトルコリラ安トレンドではなかった現象だった。その意味では、トルコリラ「6年安」がついに終わり、上昇トレンドへ転換した可能性が期待された。

ところが、上述のように今週のスタートにおいて、トルコリラは大暴落となった。きっかけは、「独裁者」のようになっているトルコのエルドアン大統領による中央銀行総裁の突然の解任発表だ。

そもそも、2020年11月に12円まで暴落したトルコリラが、その後15円以上に反発したのは、トルコ中銀がある意味では市場の予想以上の利上げを行い、それが信認回復をもたらした面も大きかったとされてきた。

そんなトルコ中銀が、まさに3月18日、事前予想以上の利上げを決定し、それを受けて15円の大台回復となっていたトルコリラだった。それが、たった2日後に、その中央銀行のトップ解任となったわけだから、金融当局への信認回復が白紙化され、トルコリラ下落リスクを試す動きになったのは当然ということではないか。

ではこれにより、トルコリラ「6年安」終わりへの期待は吹き飛ばされてしまったのか。これまで述べてきたプライス・パターンを参考にすると、足元で14.5円程度の52週MAの回復の有無は1つの目安になるだろう。

経験的に、52週MAを長く、大きく上回る動きは、継続的、つまりトレンド転換を受けた動きであり、逆に言えばそれに至らない場合は、一時的な動きの可能性が高い。このような観点からすると、足元で14.5円程度の52週MAが、週末終値において当面のトレンドを考える目安、マジックナンバーとして注目されそうだ。