サッカー・ロシアワールドカップは、フランスの優勝で幕を閉じました。おめでとうございます。日本代表チームも下馬評を覆す躍進でしたね。健闘を讃えたいと思います。ご苦労様でした。

さて、今回の開催国のロシアですが、2014年以降は、クリミア併合、東ウクライナ侵攻と続くウクライナ問題で、EU・アメリカと政治的に対立し、欧米からの経済制裁が実施されたことに加えて、2015年以降は、原油価格が下落したことで石油天然ガス関連の輸出額が大幅に減少するダブルパンチで、経済的には苦境に立たされました。
実は、2010年以降のリーマンショックからの景気の立ち上がり局面では、原油価格が上昇したことにより、ロシア経済は2010年に4.50%の成長を遂げていました(図表1)。このとき、ロシア人がアジア各国へ来訪する数は、急速に伸びていました。タイの国籍別入国者数統計(図表2)によれば、ロシア人のタイ入国者数は、2010年から急速に伸び、2013年時点では、日本の入国者数よりも、上回っていたほどです。暖かい南の国で、物価も安く、ビザも不要の措置が採られたタイは、ロシア人にとっては人気の旅行先だったようです。実際、当時の記憶では、タイの各地でロシア人観光客が目立つほどでした。しかし、前述のウクライナ問題と原油価格の低下で、この流れは止まりました。2015年には、タイへのロシア人観光客は半減しました。

この原稿は、バンコクで執筆していますが、ちょうど筆者がバンコクに到着したとき、ロシア人観光客で到着ロビーは大混雑でした。夏休みの時期にたまたま重なったということもあるのでしょう。気になるのは、原油価格が7月20日のWTI原油先物の終値で70.46ドルと2014年以来の高値水準をつけたことです。ちなみに、タイでのロシア人観光客が急速に増加していた2011年から2014年の原油価格は80ドルを上回って推移し続け、100ドルを超えていたこともありました。案外意外なところに、面白い関連性があるものだなと、スワンナプーム空港でひときわ目立つロシア人観光客の一団を見て感じました。

EUとアメリカの間には、温度差も見られます。米露首脳会談での両首脳の接近が、EUとアメリカが連携して実施する経済制裁に変化を及ぼすかにも注目したいところです。

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コラム執筆:Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank (NWB)
世界三大金融市場の一つである香港にて、個人投資家に、「世界水準の資産運用商品」と「日本水準のサービス品質」、個人向け資産運用プラットフォームとしての「安心感」を併せて提供している金融機関。マネックスグループ出資先