私事で恐縮ながら、今年の6月から半官半民Hong Kong Art Centre(HKAC)の財務委員会財務委員に任命された。期間は3年とやや長いが、年4回の財務委員会に出席し、HKACの会長・理事会メンバーに対して財務面でのアドバイスをしていくことが求められている。 さて、このHKACについて簡単にご紹介しよう。実は恥ずかしながらある方に推薦されるまでHKACの活動は全く知らず、この組織のことを勉強すればするほど香港らしさが見えてきた。HKACは、香港唯一の独立したMulti Art Centreとしての役割を担うNPOであり、Artと名の付くものを重層的にカバーしている。つまり、Contemporary Art、ComicsなどVisualとして楽しむArt、映画などMediaとして楽しむArt、劇や音楽演奏などPerformanceとして楽しむArtなどなどいくつものジャンルをカバーしながら香港という街をArtという面から世界に結び付け、香港のアートシーンを世界に発信することを目的としているNPOである。 具体的には、HKACの提供するArt関連プログラムは350を超えて、世界から2016年度90万人がそのプログラムに参加している。無論そのプログラムを通じて世界に通用するアーティストの人材育成も担っており、傘下の香港芸術学院という学校では大学から大学院まで、そして成人学校まで用意されている。本部キャンパスは灣仔にあり市内に3つのキャンパスを備えている。 Annual Reportに5つのHKACの活動指針とある。①Art Incubation ②Programme Development③Audience Building ④Arts Learning⑤Cultural Exchange and Collaboration。流石香港のNPO。極めて現実的で実践的な指針であり、まるでスタートアップ企業の戦略設定のようだ。因みに東京藝大の次の10年を見据えた行動指針は、①革新的であること②多様性があること③国際的であること、の3点である。抽象的な言葉が並ぶ日本の大学と香港のプラグマティックな指針の違いに、良い悪いは兎も角思わず香港らしいなと思ってしまう。 そんなHKACの委員会メンバーとして参加することになったわけである。名誉総裁は、香港行政長官。理事会メンバー、各種委員会メンバーを見ても香港人ばかりで日本人の名前は見当たらない。肩の力を抜いて一人の金融人としてアートのあるべき姿をこれから3年かけてHKACで学んでいきたい。大変楽しみなボランティア活動である。 6月15日には2018年度第一回会合が開催される。

コラム執筆:Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank (NWB)
世界三大金融市場の一つである香港にて、個人投資家に、「世界水準の資産運用商品」と「日本水準のサービス品質」、個人向け資産運用プラットフォームとしての「安心感」を併せて提供している金融機関。マネックスグループ出資先