先週の香港市場は欧州を巡る日々のニュースでアップダウンの非常に激しい相場になりました。日々のアップダウン率は、平時では考えられないほどの値幅となっており、朝方に大きく下落したかと思えば、引けはプラスで終えるなど、これはリーマンショック後の2ヶ月ほどにも頻繁に見られた傾向です。先々週にやっと合意に漕ぎ着けたギリシャ救済案を、パパンドレウ首相自らが国民投票実施を表明し、宙に浮かせるというサプライズを演じ、株価は急落しました。しかしすぐにこれを撤回すると好材料となり、最後はギリギリで自らの信任投票を行って過半数を得ました。

普通の首相ならばわざわざしなくても良い綱渡りをして下がり、それが取り除かれると新しい好材料ニュースが出たかのような上昇が続いたわけですが、しばらくは欧州のニュースフローによって経済を無視した乱高下が続くのではないかと予想します。ちなみに、ギリシャ国債の利回りは先々週のギリシャ救済案の合意でせっかく下がったのが、再び高値を更新しました(債券価格は下落)。これまでも何らかの解決策・救済策で落ち着くと、やがて危機復活するという繰り返しが昨年から続いていますので、何らかの形で清算するまで、同じようなことの繰り返しになるのかもしれません。

■ギリシャ国債の対ドイツ国債 利回りスプレッド(格差)

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(リンク先の画像は、グローバルリンクアドバイザーズ株式会社作成)

一方、上海本土市場は堅調に上昇が続いています。この理由は、温家宝首相が2011年10月25日に「適切な時期に金融政策の微調整を適切な範囲で実施し、マネーサプライの適度な伸びで保持する」などと発言したことから、いよいよ中国株のマイナス材料であり続けた金融引き締め局面が緩和されるのではないかという期待感によるものです。もちろん、中国の消費者物価指数の推移をみると、まだまだ高水準にあって、これが下がってくるまでには最低でも半年は時間が必要だと思われます。しかし、株価は実体経済を先読みして下がったり上がったりします。

中国株は全般的に10月まで大きく株価が下がってきましたが、これは引き締め策による経済のハードランディングを懸念しての下げであったという見方もできます。株価が大きく下がった結果、銀行や高速道路などの業績が堅調とみられる銘柄の配当利回りが一時8%前後まで上昇しました。しかしここに来て、ようやくインフレのピークは既に過ぎたという観点と、前述の温家宝首相の微調整発言から、金融緩和期待が強まり、相場は上昇に転じているというわけです。香港に上場している中国株は米国と中国本土の両方の株価の影響を受けますので両方の相場をみていくことが必要です。

今週は重要指標として11月9日の11時に10月の中国の消費者物価指数(前年同月比)の発表があります。中国の消費者物価指数は7月の6.5%をピークに、8、9月はそれぞれ6.2%、6.1%と緩やかに下落し、現時点での10月の消費者物価指数のマーケットコンセンサスは5.4%まで下がると予想されているようです。コンセンサス通りとなれば、インフレの沈静化が進んでいることが確認できるため、今後、株価の反発傾向は継続していくでしょう。

ちなみに、今年、NYダウやナスダックは年初来でプラスを維持していますが、ハンセン指数は-14%、H株指数は-15%であり、中国株は金融引き締めの影響を受けて株価が奮わなかったことがわかります。もちろん、そこまで消費者物価指数が下がらなければ、期待感で上げている株価は下がってしまいます。そういう観点でも今週の消費者物価指数の発表は重要です。