今週は台湾から本稿を書いています。 台湾の企業といえば、みなさんはどこを思い浮かべますか? おそらく、シャープを買収したホンハイ(鴻海精密工業)の名前が浮かぶ方が多いのではないかと思います。ホンハイは、多くの台湾製造業者がそうであるように、80年代から進んだ、EMS(電子機器受託生産)で、業績を伸ばし世界的な企業にのし上がりました。一方で、台湾に本社機能を置くものの、生産の多くは世界の工場と言われてきた中国で行っているという特徴があります。先週8日には、ホンハイの中核子会社が上海に上場して、話題になりましたね。 このホンハイを時価総額で遥かに上回る台湾企業があります。それは、TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Co., Ltd.、日本では「台湾集積回路製造」)社で、半導体製造業では世界的な巨人と言われる企業です。近年は、半導体の設計に特化して生産ラインを持たないファブレスと呼ばれる会社と、半導体そのものの製造に特化するファブと呼ばれる会社に分化し、設計と製造が分業されています。TSMC社は、ファブでは、世界シェアが50%を超えると言われている巨大企業です。 台湾には、こうした自社ではブランドを持たず、しかし高度で高品質な製品をより効率的に製造することに特化するB to B企業が多いです。いわば、黒子のような存在です。

私たちは、製品やブランドを通して企業を認知することが多いので、知名度のある企業といえば、どうしても消費者との接点を持つB to Cの企業に偏ります。しかし、台湾での製造業のあり方を見るにつけ、今後はますます分業化専業化が進むのではないかという思いを強くしました。

また、台湾と中国、そして米国と中国との国家間の関係は、台湾の企業の戦略に大きく影響を与えているようです。中国には片足を突っ込まざるをえない中で、台湾の企業はしたたかに戦略を持っているようです。

そうしたところを次回以降、お伝えして行こうと思います。

コラム執筆:Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank (NWB)
世界三大金融市場の一つである香港にて、個人投資家に、「世界水準の資産運用商品」と「日本水準のサービス品質」、個人向け資産運用プラットフォームとしての「安心感」を併せて提供している金融機関。マネックスグループ出資先