香港には香港以外から来ているアマ=家政婦(正式には外国人家事使用人と呼ぶらしい)さんの数は30万人と言われている。内フィリピンからは20万人、インドネシアからは10万人である。香港の世帯数でみると約7世帯に一人の割合で住み込みの家政婦さんがいることになる。週末となるとアマさんの集団が週に一回の休みを寛ぐ為にフィリピン人のアマさんは香港のセントラル地区から香港公園周辺、インドネシア人のアマさんはビクトリア公園に陣取り敷物を広げ、持ち寄りの食べ物を食べながら、時には民謡を歌い、トランプをして一日をすごしている。イメージとしては、週末になると日比谷公園と上野公園にフィリピン人女性とインドネシア人女性が花見見物のように溢れかえっているのどかな風景を想像してほしい。 そんな光景も香港市民は、目くじら立てることなく、寧ろ当然のような光景として見ている。2014年に雨傘運動ストライキでセントラル地区が学生と市民に占拠されたことがあったが、実は毎週末セントラル地区はアマさんに占拠されているのである。それもこれも住み込みのアマさん抜きには、一般家庭の主婦が働きに出ることは大変難しく、子供の送り迎え・毎日の食事の支度・掃除・老人の世話まで家事全般を住み込みのアマさんが担っているからこそ香港市民も黙認しているのであろう。アマさんの裏方での貢献の結果、香港女性の職場進出が可能となり、進出比率はほぼ男性と同数となっています。さらに、女性行政長官に代表されるように女性が官界・経済界を問わず要職を占めることも珍しいことではない。実際、前職時代に買収した香港証券会社Boom証券のトップも女性であった。 香港経済を裏方から支えているといっても過言ではないアマさんたちであるが、毎月の給与を母国に送金するのはやはり大変なようである。ビクトリア公園の近くに外国為替送金業者大手のWestern Unionの窓口がここかしこにある。銀行の海外送金手数料が法外に高いため比較的手ごろな価格で母国に送金できる。例えばフィリピンへは香港から5ドル弱であるが、そこには一つからくりがあり、送金手数料に加え為替手数料が2ポイントほど取られしかも着金に数日を要するのである。長い行列を作ってアマさんが母国への送金を行っている姿をみるにつけどうにかならんものかと思っていたら、「ブロックチェーン・レボリューション」という本に、「ブロックチェーンが移民を食い物にする送金ビジネスにメスを入れる」とある。確かに、ブロックチェーンを使えば簡単に国際送金ができるようになるような気がする。金融の世界を一気に変える可能性を秘めた21世紀の発明といわれるブロックチェーンである。ハードの秘密鍵を握りしめたアマさんが、自分のスマホで送金をして、その場で着金を喜ぶ母国にいる子供たちの笑顔を確認できるようになる日は以外と近いのかもしれない。

テクノロジーは、誰もが希望を持てる未来に繋げる・・・そんな言葉も信じたくなる今日この頃である。

コラム執筆:Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank (NWB)
世界三大金融市場の一つである香港にて、個人投資家に、「世界水準の資産運用商品」と「日本水準のサービス品質」、個人向け資産運用プラットフォームとしての「安心感」を併せて提供している金融機関。マネックスグループ出資先