先週、ベトナム・ホーチミンを訪問し、投資家の会議に出席してきました。高い成長を続けるアジア、中でも東南アジアに位置し、対外開放政策を進めるベトナムへの注目度は、一段と高まっています。 背景には、「チャイナ・プラス1」の最有力地として、ベトナムが注目されていることがあります。中国は、改革開放政策の下、膨大な人口と安い人件費を利点に世界中の製造業の製造拠点として成長し、「世界の工場」といわれる地位に登りつめました。しかし、成長と共に中国国内の賃金水準は上昇し、低コストというメリットは薄れてきました。また製造拠点化する中で、食品衛生リスクや知的財産の(中国への)流出リスク、人民元の為替リスクが顕在化してきたのです。そこで、近年では、製造拠点を中国に集中するリスクを回避するため、中国以外に拠点を持つことも本格化しており、カンボジアやタイ、ベトナム、ミャンマーなどのASEAN諸国を対象とする分散投資の動きが進みつつあるのです。 この「チャイナ・プラス1」の動きの中、ベトナムは、積極的に対外開放的な政策を打ってきています。一つは、市場開放です。外国人の株式保有には制限がありますが、これを徐々にではありますが緩和してきました。また外国人の不動産保有も、制限を緩和してきました。これにより、ベトナムへの外国からの投資は継続的に増加しています。もう一つは、国有財産の売却です。日本でも、鉄鋼や重工業、ビール製造、鉄道や郵便といった事業は、もともと国家の事業として始まりましたが、それを順次、民営化してきたことは皆さんの記憶にもあると思います。ベトナムも、国家債務の圧縮という理由ではありますが、こうした国有事業の売却を進めているのです。投資家にとっては、これは大きな投資機会であり、日本や韓国からの投資が期待されています。 こうした状況から、投資家の注目を集めているベトナムですが、3月29日に発表された2018年の1-3月期のGDP統計では、実質GDP成長率が+7.4%(前年同期比)となりました。これは、前四半期の2017年10-12月の同+7.7%には届きませんでしたが、3期連続で7%を超えており、昨年の年率+6.4%と比べても高い成長率です。世界的にみても+7%を超える成長率に達している国は少なく、ベトナムの成長ぶりがうかがえます。なお、インフレ率も2018年3月では前年同月比+2.7%と、たいへん安定しており、消費の下支え効果も見えます。3月の小売売上高は前年同月比+9.3%と2月の同+13.2%からは鈍化したものの、良好な水準が継続しています。ベトナムは、今年1番の注目の国といっても過言ではないと、筆者は考えています。 (来週に続きます)

コラム執筆:Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank (NWB)
世界三大金融市場の一つである香港にて、個人投資家に、「世界水準の資産運用商品」と「日本水準のサービス品質」、個人向け資産運用プラットフォームとしての「安心感」を併せて提供している金融機関。マネックスグループ出資先