3月末のArt Baselに続いて、4月の第一週は「香港セブンズ」と言う国際ラグビーツアーの香港大会が開催された。梅雨入り前の好天が日本で続くように、今香港でも5月の雨季開始前の季節の最も良い3月4月に大きなイベントが開催されるのである。日本ではあまり知られていないが、「香港セブンズ」は、金曜日から日曜日まで3日間、観客動員数12万人、男女40チームが覇を競い合うラグビーイベントである。(因みに15人制ラグビーに対して7人制の為セブンズと言う呼び名がついている)第一回が1976年であるから、既に40年以上の歴史を持つ香港最大のスポーツイベントであり、HSBC・Cathay Pacificと香港の代表銘柄2社がスポンサーに就任している。 開催期間中、会場となるコーズウェイベイ地区は勿論の事、セントラル地区繁華街のランカイホンやソーホーでも興奮したラグビーファンが溢れ、陽気なファンが歓声・奇声を上げているのを見かける。筆者は実は6年もメインスタジアムの近隣に住んでいるが単なる人騒がせなイベントと思って一度も観戦したことがなかった。しかし今年は「食わず嫌い」は駄目との思いで金曜の夜に生まれて初めてセブンズを観戦した。ルールを殆ど理解していない筆者にも、結論としては「無茶苦茶興奮し、血湧き肉躍る」イベントであった。セブンズが前述の様に通常のラグビーは15人制に対してセブンズは前述の様に半分以下の7人制。しかも、試合時間は、ハーフタイムで15人制が40分に対して7分。それを15人制ラグビーと同じ広さのグラウンドで行うのである。結果として、100キロ級の大男達が、F1レースの様に広いグランドを7分ハーフの間に走り抜け(ケニア選手の走る速さに唖然とした)しかも、猛獣が獲物を奪い合う様にして、ラグビーボールをガチンコ勝負で奪い合うのである。「重量級戦車が、競技場をF1カーの様に早く走り回りそれがぶつかり合う」シーンを想像して欲しい。観戦している方は、自分がまるで昔のローマのコロッセウム(闘技場)いる気分になるのだ。ちなみに日本で人気の五郎丸選手は、大型だけなのと足が速くないので、セブンズには不向きだそうだ。 こんな「香港セブンズ」の経済効果は、スタジアムの観客のみならず、街全体がお祭り騒ぎとなり、レストラン・パブ等の飲食店・高級品店等の売り上げが大きく伸び、規模としては5-60億円程度と見積もられている。3日間だけのイベントであるが、香港観光局が巨大なラグビーボールの風船をビクトリア湾に飾り、街を盛り上げるのも分かる気がする。元々歴史的建造物等の観光資源の少ないと言われる香港は、前週のArt Basel等多くの魅力あるイベントを開催することで、訪れる人々を「中華料理」以外でも飽きさせることはない。「国際都市香港・観光都市香港」の名声は、かなり香港と言う街の努力によって維持できているのだと感じる。イタリアのベネチアが、「美術のオリンピック」と言われる2年に一回「ベネチア・ビエンナーレ」と言う現代美術の国際美術展覧会を開催し、世界中からの観光客を魅了するように。 一方、3日間通しの入場料が3万円近く、スタジアム内では水が1リットル2千円と言う高価格で売られており、世間の感覚からはかけ離れた価格設定されているという批判。更に深夜まで酔っぱらったラグビーファンの乱行に対する市民の反発も強い事も確かである。「香港セブンズ」は、市民生活からかけ離れたイベントであり、共感を得られるものではないというマスメディアの論調も目立つ。イベントには、常に「明と暗」があり、それをどこまで市民が飲み込んで長く続けるのかが大きな課題であるなと改めて学んだ「香港セブンズ」でもあった。

コラム執筆:Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank (NWB)
世界三大金融市場の一つである香港にて、個人投資家に、「世界水準の資産運用商品」と「日本水準のサービス品質」、個人向け資産運用プラットフォームとしての「安心感」を併せて提供している金融機関。マネックスグループ出資先