香港上場で、中国本土のIT大手、騰訊(テンセント)は先週23日、筆頭株主である南アフリカのメディア企業ナスパーズ社(注1)が、テンセント株の約2%を売却したと発表しました。売却額は769億4,121万HKドル(約1兆300億円)と推定されます。 ナスパーズ社がテンセント株を売却したのは2001年5月の出資後、初めてのことです。今回の売却で、ナスパーズ社のテンセントへの出資比率は約33.17%から約31.17%に減少しましたが、筆頭株主の地位は引き続き維持するとのことです。ナスパーズ社も「少なくとも向こう3年はテンセント株を追加売却することはない」と発表しています。 ナスパーズ社は2001年5月に、当時ITバブル崩壊による株価の急落で経営難に陥っていたテンセントに46.4%(注2)を出資しました。当時の出資額は約3億HKドルだったと言われています。それが約17年間の株価上昇により配当を除く価値は約4,700倍にもなりました。 テンセントの筆頭株主がナスパーズという非中国企業であり、しかも南アフリカのメディア企業であるという事実は、あまり知られていない話です。しかし、中国の巨大企業には、テンセントのようにオフショアに設立された企業が多いことも結構見られるケースです。 中国国内で活動する企業であっても、企業ストラクチャーは単純ではなく、テンセントのように、オフショア法人を持ち株会社として設立して、その下に一般事業会社を持つケースが大変多いのです。こうすることで、中国国内法規制の制約を緩和したり、上場・値上り益を中国国外で確保できるようにしているのです。アリババなどもそうした例に漏れません。 一方で、複雑な企業ストラクチャーは、通常の普通株ではない形での株式保有を余儀なくされる部分があります。種類株と呼ばれる特殊な形式の株式がその一例です。アリババが香港上場ではなく、ニューヨーク上場を選択した際の決定的な要因がこの種類株にあったことは良く知られていることです。「中国企業であっても、中国法人に非ず。」というところは、結構存在します。そんな視点で、中国の株を見てみるのも面白いかもしれません。
(注1)ナスパーズは南アのヨハネスブルク証券取引所に上場する南アのメディア企業。時価総額は約9,450億HKドル。
(注2)その後のテンセントの株式上場に伴い、出資比率は33.17%に希薄化しました。
コラム執筆:Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank (NWB)
世界三大金融市場の一つである香港にて、個人投資家に、「世界水準の資産運用商品」と「日本水準のサービス品質」、個人向け資産運用プラットフォームとしての「安心感」を併せて提供している金融機関。マネックスグループ出資先