アジアに投資するといっても、実は、現地通貨(ローカルカレンシー)建てで投資するか、米ドル建てなどの主要通貨で投資するかは、リスクが異なります。マクロ経済の成長に伴って、株式などの値上がりが期待できたり、高金利のメリットを債券などで享受できたりしますが、こうした原資産からのリターンを、ともすると減殺してしまうのが、為替差損です。読者の方々にも、高金利通貨で外貨預金などに取り組んだけれども、買い入れた通貨の価格が対円で下落してしまい、当初想定したような結果にならなかった方もいらっしゃることでしょう。 つまり、ローカルカレンシー建てで投資するということは、原資産の価格のリスクのほかに、為替のリスクも負うことになるのです。そこでひとつの方法が、米ドルなどの主要通貨建てで設定された商品(投資信託など)に投資するという方法です。ちなみに、香港では、アジア株式やアジア債券を投資対象とするファンドであっても、米ドル建てでのファンド設定が多いのも特徴です。米ドルをベースカレンシーにしていますので、アジア通貨のリスクまでも背負わなくていいという利点が、ここにあります。 筆者は、アジア通貨の脆弱性は、1997年のアジア通貨危機、2007年のリーマンショックの時に比べれば、相当に改善してきており、何か事が起こるとアジア通貨が売られるという市場の反応には懐疑的です。1997年や2007年当時に比べても、アジア各国の外貨準備の水準はかなりの改善を見せていますし、対外債務もGDP比でずいぶん抑えられています。それほど脆弱な環境ではなくなってきているということです。 それでも、2016年にマレーシアリンギットやインドネシアルピアなどを中心にアジア通貨は、トランプ当選後の米ドルが買われる局面で、資本流失懸念から売りを浴びました。上述の通り、原資産の価格変動リスクに加えて、為替のリスクを取る段階かどうかは悩ましい課題です。まだ、もろ手を挙げてという局面ではないかもしれません。筆者は、長期的には、アジアのローカル通貨のリスクも一定程度積極的に取る時期が来たのではないかと思いますが、入り時は、タイミングを分散して入るなど、見極めていきたいと思っています。

コラム執筆:Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank (NWB)
世界三大金融市場の一つである香港にて、個人投資家に、「世界水準の資産運用商品」と「日本水準のサービス品質」、個人向け資産運用プラットフォームとしての「安心感」を併せて提供している金融機関。マネックスグループ出資先