今年最後の競馬ファンの心を揺さぶる有馬記念が24日開催された。一番人気しかも優勝をさらったのは、武豊騎手を要するキタサンブラック。歌手北島三郎が馬主で、且つ今年の春秋の天皇賞を制している名馬に名騎手。更に今回が引退試合と言う事でいや応なく人気は高まり、そして結果を出したのは大したものだ。有終の美とはこのことを言うのだろう。 そんな日本での盛り上がりの前に、香港では12月10日に東アジア最大の国際競馬レースである香港国際競走(メインは、香港カップ)が開催された。偶さか馬主の友人が当日レースに招待されたので、筆者もお裾分けの様にして前々日に開催されたGalaディナーにも呼ばれて当日も馬主席から観戦させてもらった。スイスの時計会社ロンジン社がイベントスポンサーであり、Gala ディナーのかなりの規模と豪華さでは圧倒され、そこには着飾った紳士淑女が集まり、友人の奥様も日本から持参された御着物での参加である。更には、レースの当日も、馬主席での素晴らしい食事に加えて、そこに集まる女性は、思い思いの帽子を被りそこは思わず華麗な帽子のファッションショーの観があり、馬主の世界は全くの素人の筆者にはその華麗なる祭典に溜息の出る思いであった。 その華麗さの中に、流石と感心した出来事があった。Galaディナーのオープニングはある女性歌手の素晴らしい歌声で始まったのだが、司会者曰く、彼女は全盲であり、彼女の日常の生活サポートをJockeyClubがしているとのことである。そう香港の競馬は、Hong Kong Jockey Club(以下'HKJC')により運営されており、HKJCは、香港最大の慈善団体であることを思い出した。HKJCの会長のご挨拶も、馬の話もさることながら、慈善団体として、ハンディキャップを負った方の支援から、学校施設への寄付などの活動についてご挨拶された。香港市内のありとあらゆるところに、HKJCの寄付によって建てられた学校施設等の記載・記念リーフがあるのはその為である。 HKCJの2016・2017年のファイナンシャルレポートを見てみる、HKJCの年間売り上げは、2,160億香港ドル(日本円で約3兆2,400億円)、払戻金支払い後の収入が、339億ドル(同5,085億円)そのうち香港政府国庫には、217億ドル(同3,255億円)、慈善献金は、76億ドル(同,140億円)雇用創出数は、22千人と出ている。HKJCが、競馬のみならずサッカーくじも併せて事業として行っているので単純な比較は出来ないが、JRAの2013年の国庫納付金が2,553億円であるので(競馬法で売り上げの10%及び剰余金の50%を国庫納付金となる)、如何に人口が日本の17分の1に満たない香港の市民に「競馬」と言うものが日常生活に溶け込んでおり、そして親しまれているかがわかる。実際HKJCのホームページを見ているとその慈善献金も含めて如何にHKJCが香港の街に貢献しているかを明示している。流石アヘン戦争のあと香港のイギリスへの割譲が決まった南京条約から4年後の1846年に始まった全権大使杯競争以来の170年の長い歴史の歩みを感じる。 因みにJRA(1954年設立)の国庫納付金は、畜産振興事業や民間の社会福祉事業の振興に充当すべきと定められているが、99%は某省OBが役員を務める法人に渡った事が判明しているという話もあるようなので、日本人は一生懸命に馬券を買って一部の「官」に貢いでいるのが、残念ながらの実態の様である。

HKJCのHPトップページの最後にこう書き記している 'do not gamble your life away'.
競馬好きの香港市民に対して、このような警句を発しているところが興味深い。人生を破滅に追い込みかねないのが「ギャンブル」であるが、結果としてその収益金が、市民に目に見える形で還元されているのが、香港の競馬システムであると思った。この街のシステムは、勉強になる。

コラム執筆:Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank (NWB)
世界三大金融市場の一つである香港にて、個人投資家に、「世界水準の資産運用商品」と「日本水準のサービス品質」、個人向け資産運用プラットフォームとしての「安心感」を併せて提供している金融機関。マネックスグループ出資先