2021年こそは家計管理をしっかりやらなければ…と感じている方も多いかもしれません。しかし、仕事や家事、プライベートで毎日忙しく、自分がいくらお金を使っているか把握できないまま、あっという間に1年が終わってしまいがちです。
そこで今回は、忙しくても、ズボラでも、“誰でも続けられる”家計簿術を生み出した人気インスタグラマーの「づんさん」にインタビュー。家計簿をつけるメリットや挫折しないためのコツ、お金に対する価値観などをお話いただきました。

づんさんプロフィール

島根県在住。3児(7歳、6歳、3歳)の母。自作で書いた家計簿術をインスタグラムに投稿したところ、「書くだけでお金が貯まる」と話題になり、フォロワーも7万人を超えている。2016年に発売された著書はベストセラーに。「づんの家計簿」をお手本に家計簿をつけている人が続出中。

シンプルな仕組みと小さな成功体験が継続につながる

――「家計簿は面倒くさい」と挫折した人も「づんの家計簿」だと続けられる!と評判です。従来の家計簿と、何が違うのでしょうか。

私も最初は、家計簿をつけても1ヶ月すら続きませんでした。途中で挫折する日々が2年以上続いた頃、「なぜ続かないのか?」と考え、家計簿をつける上でストレスになっているポイントを書き出しました。

そこで、費目分けなどをイチイチ考えることがストレスのポイントだと気づき、「頭を使わずに記録していく」ことを思いついたのです。

それから1ヶ月間、ひたすら無心になって使ったお金の金額を「ただ書き写す」というシンプルな方法を始めてみました。

色ペンを使い分けながら一目ですぐ分かるように書くのが特徴

――それで初めて1ヶ月以上続いたのですか。

はい。まず「1ヶ月で何ページ埋まるんだろう?」という好奇心が生まれ、1ヶ月続いた時には大きな達成感を得られました。

次に「1年間使ったお金を知ろう!」という目標を立て、「習慣化」と「使ったお金をかき出す」という2つのポイントに集中して継続していったのです。

――シンプルな仕組みが継続につながったのですね。

これまでずっと挫折していたのに、初めて1ヶ月、半年、1年…と続けることができ、小さな成功体験の積み重ねがモチベーションになりました。

最初の1年間は赤字でしたが、2年目でまた新しい目標を立てて続けていくと、階段を上るように自分が成長していくのが感じられ、1年半経った頃には「人生初の黒字」を達成しました。

そして、6年経った今も続けられています。

――飽きてしまったり、忘れないためのコツは何でしょう? 

例えば食事をしたら歯磨きしますし、寝る前にはお風呂に入りますね。家計簿も同じように、生活習慣の一部として身に付けることが大事だと思います。私の場合は、夜スマホを見る時間の前に、家計簿をつけるよう習慣づけています。

そうは言っても、私自身、忙しさに追われて数日分のレシートを溜め込んでしまうこともあります。それでもレシートさえあれば、後から書ける安心感もあります。ただ、溜め過ぎるとキツいですが(笑)。

できる日もあれば、できない日もある。そう思って、あまりストイックになり過ぎないことも続けるコツの1つかもしれません。

――家計簿を続けてみて、どんな変化がありましたか?

「お金を使ったら記録する」を蓄積していくと、だいたい何にいくら使っているのか、家計を俯瞰できます。例えば、今月は子どものお菓子を買いすぎているな…など。

あと、以前は「セールでまとめ買いがお得」だと考えて、日用品は常に多めに買ってストックしていました。でも、家計簿をつけるようになって、自分が節約上手だと勘違いしていたことに気づいて。ストックを止めただけでも2~3万円浮くようになりました。

そうやって無駄をなくすうちに、徐々に赤字から黒字家計へと変わっていきました。

―そうなると、モチベーションも上がりますね。

はい。お金に余裕が出てくると、心にも余裕が生まれました。

以前は、お金があればあっただけ使っていて。毎月「あと家賃を払ったらお金がない!」という状態に陥っていました。夫からいつも「何にそんなにお金を使っているの?」と言われても、説明できず…。

それが家計簿でしっかりと記録し、何に、どれだけの金額を使っているかを明確に説明できるようになってからは、夫婦お互いのストレスが減りましたね。

――家計簿が夫婦円満にもつながっているのでしょうか。

今思い返すと、夫婦喧嘩の8割ぐらいがお金に関することでした。今までは、「もっと趣味のためにお金を使いたいのに…」とイライラすることが多く、お互いに満たされない思いを抱えていたように思います。

例えば、夫から趣味のために何か買いたいと言われたとき、「今月はもうお金がないから無理!」と言ってしまうことも多かったのです。それが、今は夫に家計簿を見せて、「今月はこれを買ったばかりだし、来月にしてはどうかな?」と、数字をもとに、優しく伝えることができるようになりました。そうすると、大抵納得してくれますね。

そうやって家計簿を通じて「私も頑張っているから、一緒に頑張ろう」という共通意識を持てるようになったことも良い夫婦関係づくりにつながっていると思います。

九死に一生を得た経験から、お金の必要性を実感

――家計簿をつけ続けることで、お金やモノとの向き合い方は変わりましたか?

はい。欲しいものがあったら、「この欲しいという気持ちがずっと続くか?」、「買ったら気持ちよく使えるか?」と、まず自分自身に相談しています。「それでも欲しい!」と思ったら、その商品の金額をきちんと貯めてから買うようにしています。

そうやって買ったものは、罪悪感もないですし、喜びが溢れるのです。そしてそれを使うたびにテンションが上がって、物欲が満たされます。

物欲って、満たされないと「こんなに我慢しているのに」という気持ちが去らず、またちょこちょこ余計なものを買ってしまうのです。そうではなく、ルールを決めて、本当に欲しいものだけを買うようにしてから、不必要な出費がなくなりました。

――普段なんとなく生きていると、なかなかお金と向き合わないまま過ごしてしまいがちですが、づんさんの人生の中で、何かきっかけがあったのでしょうか。

人生で2度死にかけた経験が、今の生き方やお金など様々な物事に対する見方に大きく影響しているように思います。

――それはどんな経験だったのですか。

1度目は、学生の頃に重度の熱中症になって、痙攣を起こし、幽体離脱したような感覚で周囲のみんなが懸命に私の看護をしている様子を傍から見る、といった不思議な状況を味わいました。死ぬってこういうことなのかな…と。

その後、病院のベットの上で意識を取り戻し、「生かされているんだな」って思いました。

それまでの私は引っ込み思案でやりたいことがあっても行動できず、受け身の生き方をしていました。しかし、この経験を機に「日々、後悔しないようにもっと楽しまないと!」と意識が一気に変わったのです。

そして、やりたいことをやるには、やはりお金が必要だなって思いました。

2度目の時は、子どもの出産の際でした。出血が止まらなく、「このまま自分がいなくなったら夫や子どもはどうなるのだろう…」と不安になりました。

それで、自分の身に何が起きても大丈夫なように、子どものために学資保険に加入したり、FP(ファイナンシャル・プランナー)さんに相談するなど、お金というものに本気で向き合うようになりました。

――人生を思いっきり楽しむためには、しっかりとお金と向き合うことが大切だということですね。後半ではづんさんが家計黒字化を達成して購入されたマイホームや、お子さんのお金教育について伺います。
 

(※)本インタビューは2020年11月12日にオンラインで実施しました。


【後編】家計簿で手に入れたマイホーム、子どもに必要な「お金教育」とは?