2020年も残すところあと僅かとなりました。2021年もコロナ禍の影響により、世界経済や市場の動向はなかなか落ち着いてくれないかもしれません。しかしながら、投資を行うにあたっては、こういう時こそいつも以上に冷静に観察することが、投資機会を見出す意味でも必要不可欠です。そこで今回は、外貨建て投資で通貨の強弱を見極める際に、チェックしておきたい3つの指標をご紹介します。

通貨の強弱を見極めるための3つの指標

予めお伝えしておくと、「通貨の強弱を見極める」と言っても、為替市場は複合的に様々な要因によって時々刻々と動きます。そのため、今回ご紹介する3つの指標だけで目先の為替動向がすべて把握できるというわけではありません。一方で、為替市場を動かす複合要因を網羅的に観察し続けることは、現実的とは言えないでしょう。

そこで、少なくとも各国や地域のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)を理解し、観察することが、投資家の皆さまにとって、リスクマネジメントの観点からも非常に重要になります。このファンダメンタルズを理解し、観察するために有用なのが、今回ご紹介する以下の3つの指標になります。

(1)経常収支/GDP比率:大幅な赤字は国内の貯蓄不足であるので要注意
(2)純政府債務/GDP比率:国力に比べて国外資本への依存度が相対的に高い国は要注意
(3)消費者物価上昇率(対前年比予想):伸び率が急上昇している通貨は売られやすい

上記の3つの指標は、国際通貨基金(IMF)が年2回(4月、10月)公表しているWorld Economic Outlookの予想値を使用するのが一般的です。こちらは公開データですので、どなたでも確認することができます。

3つの指標を国や地域ごとに見ていくと…

ここからはご参考までに、直近、2020年10月に公表されたWorld Economic Outlookの予想値に基づいて3つの指標を見ていきましょう。なお、以降で各表に記載しているスコアやレーティング(rating)は、当社が独自に分析し、1つの目安として示したものです。

【図表1】経常収支/GDP比率
出所:IMF “World Economic Outlook”のデータに基づいてクラウドクレジット作成

図表1の右端に表示しているスコアをご覧いただくと、経常収支/GDP比率は「不安定」や「不良」の国が大半を占めていることが分かります。「良好」と判断できるのはシンガポールのみ、ユーロ圏やロシア、メキシコ、ブラジルは「安定」しています。

【図表2】純政府債務/GDP比率
出所:IMF “World Economic Outlook”のデータに基づいてクラウドクレジット作成

図表2の右端に表示しているスコアをご覧いただくと、純政府債務/GDP比率については、先ほどの経常収支/GDP比率とは逆に、「良好」あるいは「安定」している国が大半を占めていることが分かります。米国とブラジルの2ヵ国のみ「不良」です。

【図表3】消費者物価上昇率(対前年比予想)
出所:IMF “World Economic Outlook”のデータに基づいてクラウドクレジット作成

図表3の右端に表示しているスコアをご覧いただくと、消費者物価上昇率(対前年比予想)は国によってまちまちであることが分かります。米国やユーロ圏などが「良好」、ロシアやメキシコなどが「安定」している一方、ジョージアとケニアが「不安定」、キルギスやパキスタン、ナイジェリアは「不良」と判断しています。

3つの指標を使って通貨の強弱を見極める

これら3つの指標それぞれで算出したスコアの平均値をとって、各国や地域のファンダメンタルをレーティングしてみると、以下の通りになります。

【図表4】
出所:IMF “World Economic Outlook”のデータに基づいてクラウドクレジット作成

図表4のレーティング(rating)をご覧いただくと、ユーロやペルー、インドネシア、シンガポールが「良好」であることが分かります。あとは「安定」あるいは「不安定」に分かれます。先進国か新興国かを問わず、国や地域ごとにファンダメンタルの3つの指標から見た通貨の強弱が異なる結果となったのが、非常に興味深いところです。

本コラムが当社の2020年最後の寄稿となります。投資家の皆様におかれましては、2021年も充実した投資生活を送ることができますようお祈り申し上げます。引き続きよろしくお願いいたします。