中国のCPI(消費者物価指数)は7月に前年同月比6.5%増となり、6月の同6.4%増を上回りました。7月にはインフレは落ち着きはじめると予想するアナリストもいた中で、これは中国の物価が予想以上に高止まりの状態となっていることを示しています。そして、物価水準の高まりで、食品メーカーは販売価格を値上げしているものの、原材料コスト上昇圧力がそれ以上に大きな影響を及ぼし、利益率を圧縮しています。たとえば、3つの台湾系大手食品銘柄の2011年上半期決算発表を見ると、粗利益率がともに下がっています。
台湾の頂新集団の傘下企業の食品大手である康師傅控股(00322)の2011年上半期の売上は前年同期比27.6%増の41.4億米ドル、純利益は15.9%増の2.3億米ドルとなり、利益の伸び幅は売上の伸び幅を下回っています。これも原材料コスト拡大が原因です。上半期の粗利益率は26.1%で、2010年上半期の粗利益率と比べ、約5ポイントの低下で、2007年来で最も低い粗利益率になっています。中国旺旺(00151)の売上も27.6%増の12.8億米ドルと増収ですが、純利益はわずか3.6%増の1.7億米ドルです。粗利益率は33%で、前年同期比5.1ポイント下がっています。さらに統一企業(0220)の売上も前年同期比42%増の88億元と大幅増収となる一方で、純利益は40.8%減の大幅減益でした。そして、粗利益率が6.2ポイント減の28.2%となっています。
今後の業績見通しですが、物価水準が高止まりしており、2011年下半期も食品メーカーは原材料コスト上昇の圧力を受ける見通しです。さらに、中国本土の人件費上昇によって生産コストが一層高まっています。その一方で、康師傅は下半期の製品販売価格の値上げについて、慎重的な姿勢を示しています。これは競合が激しいためでしょう、ともあれ、このような状況ですから下半期も利益率の改善はあまり期待できなさそうです。
このため食品メーカーの株価は調整しています。たとえば、これまで康師傅は相場と逆行して上昇し続け、過去最高値を更新したばかりでした。しかし、大幅な上昇で調整のタイミングになりつつあったところで、上半期の業績が期待外れとなり、康師傅の株価は急激な調整となり、この3ヶ月来の最安値になっています。中国旺旺や統一企業の株価も軟調に推移しています。しかしながら、これらの市場で大きなシェアを持っている食品銘柄はインフレが落ち着けば業績を回復すると思われますし、長期的な見通しも良好です。中国食品市場の長期的な潜在成長力は非常に大きいと考えられるからです。大きく調整したところは長期の視点で、投資を検討しても良いのではないでしょうか。食品セクターの代表的な銘柄としてはこのほか、青島ビール(00168)、中国食品(00506)、中国蒙牛乳業(02319)、煙台張裕ワイン(深センB株:200869)などがあります。