前回のコラムでは、「自分好みの株主優待の絞り込み方」というテーマで、4つの方法を紹介しました。今回のコラムでは、その4番目に出てきた「利回り」について詳しく掘り下げていきます。
さて、優待投資では、もらえる株主優待の額面の多さに注目しがちですが、同時に「どれだけ投資金額が必要か」を考えなければいけません。なぜかというと「もらえる額面は多いけど、投資金額も多い」といった場合、お得とはいえない場合もあるからです。そういった場合の「お得さ」をはかる指標として「利回り」というものがあります。まずは利回りの考え方について解説していきます。
優待投資で見ておきたい3つの利回り(優待利回り、配当利回り、総合利回り)
【1】優待利回り
ここで定義する優待利回りとは「株の購入価格に対してもらえる、1年間分の優待価値のリターン」を表す指標です。一般的に、この数値が高いほどお得な優待といえます。計算方法は次のようになります。
優待利回り(%)=優待の価値(円)÷優待取得にかかった金額(円)
例えば、個人投資家に人気のある、ヤマダ電機を展開する「ヤマダホールディングス(9831)」の優待、「優待買物券3,000円分(年間)」を取得した場合、実際に優待利回りがいくらになるか計算してみましょう。
「ヤマダホールディングス」の優待取得に必要な株数は100株で、株価は507円(2020年11月6日終値)です。つまり、優待取得にかかる金額は、100株×507円=50,700円となります。よって、「ヤマダホールディングス」の優待利回りは次のようになります。
優待利回り(%)=3,000円(優待の価値)÷50,700円(優待取得にかかった金額)=5.92%
個人的には使いやすい優待で、「優待利回り5%」越えはあまり見かけないので、お得な優待といえるのではないかと感じています。
【2】配当利回り
配当利回りとは「株の購入価格に対してもらえる、1年間の配当リターン」を表す指標です。計算式は次のとおりです。
配当利回り(%)=配当(円)÷株価(円)
先ほど出てきた「ヤマダホールディングス」を例にとると、配当が10円(2020年3月期)となっているので、株価507円とともに計算式に当てはめると、次のようになります。
配当利回り(%)=10円(配当)÷507円(株価)=1.97%
「配当利回り1.97%」と言う数字は、いわゆる『高配当』の部類には入らないものの、日経平均株価の平均配当利回り(予想)が1.93%(日経電子版2020年10月22日の「10月21日株式指標」より)となっているので、市場平均レベルの水準といえるのではないでしょうか。
【3】総合利回り
今回紹介する総合利回りとは「優待利回り」と「配当利回り」を足したトータルの利回りです。
投資金額に対しての優待・配当を合わせたトータルリターンが、どれぐらいあるのかを把握するのに便利です。
総合利回り(%)=優待利回り(%)+配当利回り(%)
「ヤマダホールディングス」を例に計算すると、優待利回りが5.92%、配当利回りが1.97%です。この2つを足すと、7.89%となります。よって、この「7.89%がヤマダホールディングスの総合利回り」といえます。ヤマダ電機を日常的に使う投資家であれば、総合利回りで年間7.89%のリターンがあるのはうれしいですね。計算上ではこのような数字となりましたが「利回りが高い場合の注意点」もあります。
利回りで価値を測る場合の注意点とは
利回りが高いことは投資家にとってよいことですが、「なぜ利回りが高いのか」にも注目してください。例えば、業績が悪くて株価が下がり、結果的に利回りが上がっていることがあります。この場合は、要注意です。なぜなら、業績悪化による、さらなる株価下落による損失の可能性があり、また、株主優待の変更や廃止、配当の減配や無配など、高い利回りを保つ前提が崩れてしまうことがあるからです。
これらの危機を回避する方法は、投資先企業の業績をしっかりと見ておくことです。特に、2020年はコロナによる影響で業績が悪い企業が多く、株主優待の変更や減配が見られます。
利回りの高さばかりに気を取られず「会社の価値に投資をする」という投資の本質を忘れないようにしたいですね。