建設機械は高度経済成長に欠かせない存在です。日本経済の1970年代から1980年後半にかけてのピーク時には、世界の建機需要の実に4割が日本国内にあり、この狭い島国にブルドーザーやショベルカー、コンクリートミキサーやクレーンが世界で最も多く存在していました。時代は変わって世界の建機需要のホットスポットは中国に移り、世界の建機需要の5割を占め、日本の全盛期をも越える世界シェアとなっています。

経済成長が続く中国では今後も都市化の進む余地は多く残しており、建機需要はこれからまだまだ成長する見込みで、世界の建機メーカーにとって最重要戦略地域となっています。ちなみに、現在日本の建機需要は世界全体の4%しかなく、実に10分の1のシェアとなってしまいました。

しかし、建機セクターは景気循環の影響を大きく受けます。これまでの流れを見てみると、2008年末に発表された中国政府の4兆元の景気刺激策に利益を受け、2009~2010年の建機セクターは大幅な成長を遂げていました。2010年の主要製品の販売状況を見ると、掘削機、ローダー、ブルドーザーの販売量はそれぞれ2009年比74.5、51.1%、62.2%拡大しています。

しかし、中国政府は2010年第2四半期から金融引き締めに転じるようになり、2011年に入ると、締め策実施の影響で、新着工のプロジェクトが2010年末と比べ減少し、建設機械の販売量は減少に転じています。2011年5月、建設機械の8種主要製品の販売量はともに4月比で減少しています。

そのうち、ローダーの販売量は2011年4 月比では20%以上減少しています。掘削機も2011年4 月比では47.7%減少しているほか、前年同期比でも12.4%減少し、前年同期比の単月ベースで初のマイナス成長となっています。そのほか、ブルドーザーの販売量も前年同期比34%減少しています。さらに6月に入り、中国の中部と南部地域において、豪雨による洪水被害が続いています。新規着工量が天気に影響されたため、6月の建設機械業の販売額は5月比3.7%減少し、単月ベースのマイナス成長を続けています。このため建機銘柄の株価は大きく落ち込んでいます。

しかし、最初に書いたように建設機械業の長期的成長見通しは良好であり、いずれインフレが克服され、再び金融緩和がなされるようになれば活況になってくるものと思われます。2011年~2015年の建設機械業の5年計画がまもなく発表されますが、それによると、2015年、中国の建設機械業の市場規模は9000億元に拡大し、今後5年間の産業年平均成長率は17%と見込まれています。

そして、業界のトップクラス企業の業績成長率は25%~30%に達する見込みです。中国最大の建機メーカーは本土A株上場の徐工集団(000425)で時価総額規模では日立建機を少し抜いたほどになります。それでもまだキャタピラーの9分の1、コマツの4分の1であり、もし中国市場が国内メーカー製品を多く使うようになれば(かつての日本でもコマツが躍進したように)、時価総額での上昇余地は大です。香港上場企業を見てみると中国2位の中聯重科(1157)があります。中国3位は本土A株上場の三一重工ですが、三一重工の兄弟会である三一国際(0631)が香港市場に上場しており、三一重工自体もまもなく香港に上場する予定です。このほかでも、ホイールローダー首位の中国龍工(3339)などが香港に上場しています。