先週は、米株式市場でNYダウ平均が合計1,833ドルも下落し、当然、市場は全体にリスク回避的なムードに包まれることとなりました。言うまでもなく、欧米で新型コロナウイルスの感染再拡大に歯止めが掛からず、都市封鎖(ロックダウン)の再導入に踏み切る都市が日増しに増えていることと、間近に控えた米大統領選の行方が非常に不透明なままの状態であることが主な悪材料ということになります。
リスク回避の円買いへとなびきやすいムード
米株安の煽りを受けて、市場にはリスク回避の円買いへとなびきやすいムードが醸成され、米ドル/円も幾度か104.00-10円のレベルを試す動きとなりました。ただ、今のところ104円処での下値支持はかなり強固で、下へ攻めきれずに跳ね戻されると途端にショートカバーが優勢になるといった状況が続いています。もっとも、週末10月30日のNY市場終わりにかけての米ドル/円の戻りは月末のフローによるところも大きいと考えられ、必ずしも104円割れの下値リスクが遠退いたとは言い切れないものと思われます。
対米ドルでの中国人民元とユーロの上昇が一服
もちろん、対米ドルでの中国人民元とユーロの上昇が一服しているという事実も見逃せません。米ドル/人民元は10月21日に一時6.64元処まで下押す場面もありましたが、10月28日には一時6.73元処まで値を戻す動きとなりました。さすがに、中国当局も急ピッチに過ぎる人民元高はけん制しておきたいとの姿勢を露わにし始めており、ひとまず足下では対人民元での米ドル安に歯止めが掛かる格好となっています。
一方のユーロについては、やはり欧州における新型コロナウイルス感染者数の記録的な増加を嫌気する格好となっており、先週のユーロ/米ドルは週足ローソクが長めの陰線を描くこととなりました。足下では、89日移動平均線に続いて一目均衡表の日足「雲」下限をも下抜ける弱気の展開となっており、目先は9月25日安値=1.1612ドルが意識されやすくなっている模様です。ただ、先週の下げに関しては月末要因が絡んでいる部分もないではないと考えられ、今週はその反動が生じるかどうかを見定めることも必要でしょう。
既知のとおり、先週行われた欧州中央銀行(ECB)の理事会では、次回12月の定例会合で追加緩和策の実施に踏み切る方向性が明確に示されていました。今後はその内容に関わる市場の憶測が相場の行方を左右することになりそうです。そのため、当面は前記の1.1612ドル処の攻防が大きな焦点ということになるものと見られます。仮に同水準を下抜けると、当面の下値のメドがつきにくい状態となり、場合によっては1.1500ドル処を下回る可能性もあり得ると心得ておきたいところです。
米大統領選「激戦州」の結果に注目。少々ボラタイルな展開も
もちろん、今週最大の焦点は米大統領選の行方であり、特に注目されるのはフロリダ州やアリゾナ州、テキサス州などサンベルトと称せられる地域に属する「激戦州」の票の行方です。なかでも、10月12日から郵便投票の開票が行われているフロリダ州は他の激戦州よりも先に開票結果が明らかになると見込まれ、まずはフロリダ州の結果を受けて市場の反応が少々大きく出るものと予想されます。
トランプ氏はフロリダ州を落とすと敗色が濃厚になることが予想され、勢いでバイデン氏優勢の流れが強まれば「米ドル/円が一時的にも大きく下押す可能性がある」と見る向きは少なくないようです。そうであるとして、結果的に米ドル/円が104円処の節目をクリアに下抜けると、そのまま102円前後の水準まで一気に下押す可能性も十分にあり得るでしょう。仮にそうなった場合には、ほどなくショートカバーの動きが急になる可能性もあり、一時的にも少々ボラタイルな展開になるものと心得ておく必要があるでしょう。