今年も年末調整の季節がやってきます。もう会社から年末調整の書類が配布されたという人もいるでしょう。今ではパソコンやスマートフォンで書類作成ができるケースも増えているので、ずいぶん簡単になったと感じる人もいるかもしれません。
年末調整とは、1月から12月までの給与や賞与から差し引かれた所得税について、過不足額の精算をすることです。今年は税計算の方法が所々で変わりました。年収850万円を超える人は税負担が増える計算となります。
大切なお金のことですから、主な変更点を知り、受けられる控除はしっかり受けるようにしましょう。今回は2020年(令和2年)分の年末調整の変更点を中心にお伝えします。
2020年分の年末調整の主な変更点
給与所得控除額の一律10万円引き下げ
給与所得控除額とは、給与所得者の税計算において1年間の給与等の収入から差し引く金額のことです。サラリーマンの経費と考えられる金額です。年収に応じて計算することになっています。
その給与所得控除額が、年収850万円以下の場合、一律10万円引き下げられることになりました。年収850万円を超える場合では一律195万円の控除となり、年収額により10万円〜25万円少なくなります。
収入から引かれる金額が少なくなるので、税額が増えるように思えますが、基礎控除額が増えるので、年収850万円以下の方には影響しません。
基礎控除額の引き上げ
2019年分までは一律38万円の控除額でしたが、2020年分からその控除額が多くの人の場合で増えます。合計所得金額(1年間の給与等の収入-給与所得控除額)が2400万円以下の場合で10万円引き上げとなります。2400万円を超える場合は年収に応じて段階的に金額が減り、2500万円を超えると控除額が0円になります。
年収2000万円以上の人は年末調整ではなく確定申告をしなくてはならないため、年末調整を受けられる人は10万円、基礎控除額が増えることになります。
所得金額調整控除の創設
給与所得控除の見直しにより、年収850万円を超える人は税負担が増えます。この税負担が増える対象となる家庭には介護世帯や子育て世帯が多いため、一定の要件に該当する場合には給与所得控除額の増額調整が行われます。
その要件とは、主に給与収入が850万円を超え、自身または同一生計配偶者、扶養親族のいずれかが特別障害者であること、もしくは扶養親族が23歳以下であることです。該当する場合は、最大で15万円、控除額を増やすことができます。計算式は以下の通りです。
所得金額調整控除額=((給与等の収入金額と1,000万円のいずれか少ない額)−850万円)×10%
その他にも扶養者の合計所得金額の要件の変更、住宅ローンの区分の追加などがありますが、ここでは割愛させていただきます。
年末調整で忘れずに申告したい控除
年末調整では、自分で申告しないと控除してもらえないものがあります。以下をぜひご確認ください。
生命保険料控除
生命保険に加入している方は、ご自宅に「生命保険料控除」の郵便物が届いていると思います。同封の説明書に記載してある通りに書類へ記載して、控除を受けましょう。2012年以前の保険は「旧生命保険料控除」、「旧個人年金保険料控除」の2つ、2012年以降は「新生命保険料控除」、「介護医療保険料控除」、「新個人年金保険料控除」の3つです。新しい方の3つでそれぞれ4万円を上限に控除を受けられます。
小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済や確定拠出年金(iDeCo)等に加入している方は、ここで掛金の全額控除を受けられます。
住宅ローン控除
1年目は確定申告が必要ですが、2年目以降は年末調整で控除を受けることができます。
社会保険料控除
家族の国民健康保険料、国民年金保険料を負担した場合は、全額控除を受けられます。
提出忘れに気がついたら
控除証明書など書類の提出を忘れ、控除を受けられなかった場合は、2月半ばから始まる確定申告で取り戻すことができます。
医療費控除を受ける場合や、ふるさと納税で5つ以上の自治体に寄付をしたという場合も、確定申告しないと節税はできません。
税金は納めるべきものですが、できるだけ節約したいものです。年末調整はそのチャンスの時ですから、しっかりと取り組みましょう。