前回コラムでは、「長期分散投資」のうち、なぜ「長期」で投資をすべきなのかについて、その理論的根拠を含め説明しました。今回は、その続編ということで、もう1つの「分散」がなぜ必要であるかについて、説明したいと思います。

分散投資にも理論的根拠がある

「分散」によるアセットアロケーションにも、理論的根拠が存在します。それが「モダンポートフォリオ理論」です。これは米国の経済学者ハリー・マーコウィッツ氏が考案し、ノーベル経済学賞を受賞したファイナンスの基本となる考え方です。

それぞれの投資対象の期待リターンとリスク(変動率=標準偏差)を想定し、それらを組み合わせることを考えます。同じリターンであれば、リスクが小さい方が優れたポートフォリオと言えます。

期待リターンは構成する各資産の期待リターンの加重平均になるのに対し、標準偏差はそれぞれの資産の加重平均より小さくなります。

つまり、資産を組み合わせることにより、リターンを下げずにリスクを低減することが出来ることを意味します。これは数式によって数学的にも証明されています。

意味のある分散・無意味な分散とは

しかし、何でも資産を分散すれば変動率を下げる効果があるかと言えば、そうではありません。

2つの資産の値動きが、どの程度連動しているかを数値化したものが「相関係数」です。これはマイナス1からプラス1の間の数字になります。

相関係数がプラス1の場合、2つの資産はまったく同じように動くことになり、分散効果はゼロです。逆に、相関係数がマイナス1の資産を組み合わせると、値動きが正反対になりますので、お互いに打ち消し合うことになり、リターンはゼロになってしまいます。この場合も、分散効果はありません。

最も効果的なのは、相関係数が0(値動きに関係性がほとんどない)の資産を組み合わせることです。そうすれば、平均のリターンを実現しながら、変動率を小さくすることができます。つまり、小さなリスクでプラスのリターンを実現する可能性が高まるのです。

相関係数がゼロに近い資産を組み合わせたとしても、期待リターンが低いものになると、リターンが向上しません。むしろ分散すればするほど、平均のリターンが下がってしまい逆効果になります。

分散投資はそれぞれの期待リターンが高く、相関係数が0に近いものを組み合わせることで最大の効果を得られると考えられます。

投資対象を「金融資産」から「実物資産」に広げてみる

株式や債券のように、値動きが異なる様々な金融資産を組み合わせることは、分散投資の効果を高めるための伝統的な投資方法です。

しかし、金融資産だけではなく、実物資産に分散対象を広げることで、更に値動きの異なる期待リターンの高い資産を組み合わせられる可能性も高まると考えています。それによって分散効果を更に高めることができるのではないでしょうか。

ですので、株式と債券といった金融資産だけで分散させるよりも、そこに暗号資産(仮想通貨)や不動産、更には金(ゴールド)やそれ以外の実物資産を組み入れ、投資対象を多様化させることが有効でしょう。

それによって、分散効果を一段と高められる可能性があるなら、幅広い投資対象の値動きをチェックし、分散効果を最大限に活用できるポートフォリオを構築していくことが、最も合理的な投資方法と言えるでしょう。

長期分散投資が重要であるということはこれからも変わらないと思われます。しかし、そのために組み入れる資産は、これから広がっていく可能性があるということを念頭に置いておくようにしましょう。