私はもう20年以上、資産運用は「長期」「分散」で行うべきだと主張してきました。この考え方は今でも変わっていません。

しかし、個人投資家の中には、長期分散投資のメリットに関して、理論的な根拠をまだ理解していない方もいらっしゃるように思われます。

長期分散投資には理論的根拠がある

「長期分散投資」というオーソドックスな資産運用は、なるべく長く、そしてなるべく投資対象を分散させて投資していくことによって、最適な資産運用が実現できるという考え方に基づいています。

これは、思い付きで言っているのではなく、その裏にはしっかりとした理論的根拠が存在するのです。

そこで、なぜ長期分散投資が資産運用の王道なのかについて、2回にわたってお話ししたいと思います。

まず今回は、なぜ「長期投資」すべきなのかを考えます。

「大数の法則」を投資に応用

統計学の世界には、「大数の法則」と呼ばれる有名なルールがあります。これは、サンプル数が増えるにつれ、その確率は本来あるべき確率に収斂していくというものです。

例えばコインを10回投げても、本来の確率である表が5回、裏が5回出るとは限りません。表が出る確率は2分の1ですから、2分の1の10乗(1/2^10)で、表が10回連続出ることもあり得るのです。

ところがコインを投げる回数が100回、1,000回、10,000回と増えていくにつれて、表が出る確率は本来の確率である2分の1に収斂していくことがわかります(1万回コインを投げて、すべて表が出る可能性はほぼゼロです)。

ということは、理論上の確率に現実を近づけるためには、なるべくたくさんのトライアルを行った方が良いということになります。

これを投資に応用するとどうなるでしょうか。

例えば、株式を1年間保有している場合を考えてみます。1月頭に株を買って、12月末までそのまま保有しているだけです。しかし、見方を変えれば1月の頭に買って、その翌日に売却し、同じ値段でその日に買い戻す。そして、その翌日にまた売却し、また次の日に同じ値段で買い戻す、これを1年間続けているとも考えられます。

このように1年間の保有を毎日の保有の連続というように、切り分けて考えることができます。

「短期」より「長期」で保有する方がプラスのリターンを期待できる

毎日の株価が上がるか下がるかは分かりません。しかし過去のデータから分かることは、長期的かつ平均的には、価格が下がる可能性よりも上がる可能性の方が高いということです。

であれば、ここで大数の法則を活かし、そのような機会をなるべくたくさん捉え、本来のプラスのリターンに近づくようにするのが賢明だと考えられます。

大数の法則と、過去の資産運用マーケットの平均的なプラスのリターンから考えれば、タイミングを狙って短期的な株価の上昇に賭けるような投資をするよりも、大数の法則に従ってなるべく長く保有し続けることの方が安定した収益を上げられる可能性が高いことがわかります。

どの日に株価が上がり、どの日に株価が下がるかは誰にも分かりませんが、株式市場にとどまり続けていれば、リターンが得られる可能性が高いと言えるでしょう。

しかし、「長期で投資を行うべき」と言うのは、資産運用マーケットが成長を続けていくことが前提になります。もしマーケットが右肩下がりであれば、平均的リターンもマイナスになります。長期で投資をすれば、大数の法則に従ってネガティブなものに近づいて行くからです。

今回はなぜ長期で資産運用すべきかについて取り上げました。次回はなぜ「分散」すべきなのかについて考えていきます。