中国国内の鉄鉱石価格は2010年から比べると大きく上昇しており、高止まりしています。この原因は2つあります、1つは世界の鉄鉱石の輸出で大きなシェアを占める三大鉄鉱石メーカーの価格コントロール力が高まっていること。もう1つは中国の鉄鋼生産の拡大で、鉄鉱石の需要が安定し、高い価格が維持できるからです。春と夏は鉄鋼生産の閑散期ですが、それでも2011年春~夏は中国の粗鋼生産量は安定的に拡大し、6月下旬、粗鋼の1日当たり生産量は200万トンを超え、過去最高水準を付けています。一方、鉄鋼価格について見てみると、やはりこちらも2011年から比べると大きく上昇しています。原材料である鉄鉱石価格の高止まりや、国内の低所得者向けの住宅建設加速による鉄鋼需要の拡大、及び電力制限の実施による鉄鋼供給減少の見込みなどが国内の鉄鋼価格を支えており、今後も上がる余地があると思われます。ただ、2010年に入ってからは横ばいかやや緩やかな上昇という程度に留まっています。
一方、鉄鋼メーカーの利益率を見てみると低いまま改善されておらず、1~5月、中国の鉄鋼・冶金業の利益合計は640.2億元で、前年同期比1.1%減少しています。コストの増大を販売価格に充分転嫁できていない為です。そこにきて引き締め策が影響して鉄鋼需要が減少するであろうという見通しが鉄鉱企業の株価に影を落としています。鞍鋼(00347)や馬鞍山鉄鋼(00323)といった主要鉄鉱銘柄の株価は大きく下落して、4兆元の経済対策効果で株価が高騰した2009年後半から株価は半分程度になっています。もちろん、すぐに株価は回復しないでしょうし、まだ株価は下がるかもしれません。しかし、長期的に考えれば、このように株価が下がっているときこそ、投資のタイミングであると考えることもできると思います。消費者物価指数が下がり、中国の金融引き締めが緩められれば、いずれ鉄鉱需要はさらに拡大すると思うからです。
中国の大手オイルパイプメーカーである勝利鋼管(01080)に訪問した際、2010年第2四半期からインフレ抑制の為に、抑えられていた国家パイプラインプロジェクト用の注文が、2011年第2四半期からは回復してきており、消費者物価指数の落ち着きが確認できれば一層注文に弾みがつくだろうとコメントしていました。勝利鋼管は一例ですが、中央政府がインフレ抑制の為にブレーキを踏み続けている間はどうしても鉄鋼会社の株価も弱含んでしまいます。仮に、もしもインフレが一層高進して、一段の引き締め策が視野に入ってくれば、鉄鋼株は一段と下落するでしょう。しかし、この夏にインフレはピークを迎えると見るエコノミストも多く、そう考えるなら、大きく株価が下がっている鉄鋼株への投資を検討するのもいいのではないかと思います。なお鉄鋼銘柄には前述の3銘柄のほか、重慶鋼鉄(01053)や本鋼板材(深センB株:200761)、世界最大級の鉄鉱石生産企業であるヴァーレ(06210)、特殊鋼大手の天工国際(00826)などがあります。