株価を左右する大きな軸は景気動向

東京株式市場は9月相場に入りました。ジャクソンホール会合や米共和党の全国大会が終わり、米中の景況感の改善モメンタムが株価を左右しそうです。

安倍首相の辞任報道で先週末は荒れ相場となりました。夕方の記者会見を待たずして、後場の取引時間中に速報が流れたためです。私はちょうどラジオ番組に出演中で、株価の急落にはびっくりしたものの、取引時間中に悪材料を織り込めたのは非常に大きいと思います。

これが夕方の記者会見で初めて明かされる材料であったなら、週初の株式市場の反応は違ったものになっていたでしょう。ただ、米国市場では日本の事情を全く気にする様子はなく、S&P500は7日続伸で初めて3500ポイントを上回って終了。ナスダックも史上最高値を更新して終了しました。

目先的には、次の首相が誰になるかで日本株は思惑絡みの動きが予想されますが、やはり大きな軸は景気の動向です。今週、米国では8月ISM製造業景気指数や米8月雇用統計などの重要指標が多く発表される予定で、これまでの景況感の改善スピードが弱まったニュアンスで受けとめられると株安のきっかけになるでしょう。改善スピードが維持されると、株価は一段高となるでしょう。そこが外部環境面として重要なポイントになってくると思われます。

海外投資家は9月には年間を通じて日本株を売り越す傾向が強いですが、8月第2週に現物・先物を合わせて1兆円近く買い越しました。続く第3週は1600億円程度の売り越しとなったものの、株価の動きを見る限り大幅売り越しに転じたとは思えません。

騰落レシオの長短クロスとTOPIXのフシ抜けに注目

東証1部の騰落レシオ(25日移動平均)は92%程度(8月28日現在)と過熱感はありません。騰落レシオは値上がり銘柄数と値下がり銘柄数の比率で、一般的には25日間の移動平均で示します。120%以上で天井圏に近く、70%以下で底値圏と判断しますが、期間がより長い75日移動平均と併用すると違った見方ができそうです。

図表は、TOPIXと東証1部の騰落レシオです。騰落レシオは25日移動平均が70%あたりから上昇していますが、75日移動平均を上回り切れていません。TOPIXが6月高値のフシを上抜けられない状態が続いていることも要因です。過去、この長短クロスが出現した後、25日移動平均が75日移動平均を上回っている間は相場が強くなる傾向があります。最近、特に強いマザーズ市場の方は、すでに25日移動平均(100.6%)が75日移動平均(97.4%)を上回っており、マザーズ指数も6月の高値を大きく更新しています。

【図表】TOPIXと東証1部の騰落レシオ
出所:QUICK Astra ManagerよりDZHフィナンシャルリサーチ作成

このことからも、テクニカル面では、騰落レシオの長短クロスとTOPIXのフシ抜けが、9月上放れの重要なポイントになるでしょう。(8月31日前引け執筆)