保ち合いブレーク後のパターン通り=先週

先週の米ドル/円は一時104円割れ寸前まで一段安となりました(図表1参照)。そもそも、米ドル/円は先々週106円を下回り、2015年から続いてきた長期三角保ち合いを「下放れ」したようになっていました(図表2参照)。

【図表1】米ドル/円の日足チャート(2020年5月~)
出所:マネックストレーダーFX
【図表2】米ドル/円の月足チャート(2015年~)
出所:マネックストレーダーFX

このように、長期三角保ち合いをブレークしたケースは、今回の米ドル安方向だけでなく、米ドル高方向も含めて、今年これまで何度かありましたが、いずれもブレークした方向に一段と大きく動くところとなりました。以上のように見ると、先週の米ドル/円急落も、今回も長期保ち合いブレークによる影響がやはり大きかったのではないでしょうか。

ただこれまでの保ち合いブレークは、短期的に行き詰り、いわゆる「ダマシ」を繰り返してきました。今回もチャートのブレークも、直後のこのような活発な値動きの割には「ダマシ」に終わり、106円を回復し、保ち合い内に戻ってしまうのか、それともいよいよ100円割れといった米ドル一段安に向かうのか。

米ドル安リードしたユーロ/米ドルなどに調整の機運

先週金曜日一気に104円割れ寸前まで急落した米ドル/円でしたが、その後一転して一時106円まで急反発となりました。月末要因の米ドル買いの影響などが指摘されましたが、もう一つ、この間米ドル下落をリードした形となっていたユーロ/米ドルが急反落(米ドル高)となったことに連れた面もあったのではないでしょうか。

6月末には1.12米ドル台だったユーロ/米ドルは、7月末には一時1.19米ドルまで一段高(米ドル一段安)となりました。ただこういった中で、CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋のユーロ・ポジションは、確認できる限りでこれまでの最高の買い越しとなりました(図表3参照)。経験的には、ユーロの「買われ過ぎ」懸念が強くなっています。

【図表3】CFTC統計の投機筋のユーロ・ポジション(2017年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

またユーロ/米ドルの週足チャートは、先週までに6週連続陽線となりました(図表4参照)。このように見ると、米ドル安をリードした形となっていたユーロ高・米ドル安の動きがそろそろ一段落し、反動が入る可能性は注目されます。かりに、対ユーロで米ドル反発となった場合、それに米ドル/円も連れる可能性は要注意でしょう。

【図表4】ユーロ/米ドルの週足チャート(2019年4月~)
出所:マネックストレーダーFX

ドル/円と米国株の関係に注目

ところで、最後に株との関係について述べてみたいと思います。米ドル/円は、先週こそ急落したものの、それにしても過去一年ほどは、日米金利差では説明できない高水準での推移となってきました(図表5参照)。それは、金利差をほとんど無視した米国株投資が一因だった可能性がありそうです。

【図表5】米ドル/円と日米金利差 (2019年1月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

米ドル/円と日米金利差のかい離が拡大したのは昨年後半でした。金利差の割に下がらない米ドル/円を、その後しばらく比較的うまく説明できたのはNYダウなど米国株でした(図表6参照)。これは、いわゆるGAFAに代表される米グロース株人気に伴う米国株投資が、金利差からかい離した米ドル/円の上昇を支えたということではないでしょうか。

金利差からかい離した米ドル高。それは対円だけの現象ではありませんでした。ただすでに述べたように、ユーロ/米ドルなどは最近にかけて大きくユーロ高・米ドル安が進み、金利差とのかい離が是正されてきました。これは、「金利差とは無関係のGAFA人気」を受けた米ドル買いの変化も一因でしょうか。

その中で、ほとんど米ドル/円だけが金利差からかい離した米ドル高水準が続きました。先週にかけての米ドル/円急落は、「金利差からかい離したほとんど最後の米ドル高」是正の始まりといった見方もできます。そうであれば、それが米国株にどう影響するかは、8月の為替の行方を考える上でも注目されるのではないでしょうか。

【図表6】米ドル/円とNYダウ (2019年1月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成