この記事の読者には子育て世代の方もいらっしゃると思います。お子様の塾、ピアノレッスン、スイミング…教育費の負担感に打ちひしがれているのは私だけ(!)ではないと思います。おじいちゃん、おばあちゃんが教育資金を援助してくれることになった場合、その税の負担はどうなるのでしょうか。今回はそんな視点からお伝えします。

その都度、必要な資金を援助するには

前回のコラムで、贈与とは「あげますよ」、「もらいますよ」の意思の合致であるとお伝えしました。おじいちゃんが孫に「学費を負担してあげるよ」、孫が「おじいちゃんありがとう」となればこれは原則、贈与に該当します。

ただし、祖父母の学費負担がその都度、学校への入学金、授業料等への支払いに直接充当されるのであれば、その学費負担は贈与税の非課税となります。

ここでいう学費負担は、義務教育費に限りません。教材費や文具費、義務教育以外の塾など通常必要と認められる費用も含まれます。なお、大学4年間分の授業料を一括で祖父母が贈与するなど、資金が父母や孫の預金口座で貯蓄されたり、株式投資されたりするときは、その都度、直接の充当とは言えないため非課税とならず、贈与税の対象となります。

また、仮に父母の蓄財や収入が十分で教育費の負担に余裕があったとしても、そのことは祖父母からの贈与の非課税についての判断に影響を与えません。この方法は、孫のために有意義かつ税負担なく贈与することができるため、お伝えすると多くのお客様が喜んでくださいます。

一括で教育資金を渡すには

前述のように、都度ではなく、一括して教育資金を渡してしまいたいという方もいらっしゃいます。そんなお気持ちに沿うのが「教育資金一括贈与」という制度です。

どのような制度かと言いますと、一定の手続きを踏むと、祖父母から孫へ教育資金を一括で贈与しても(つまり都度の支払いでなくとも)1,500万円まで贈与税が非課税になる制度です。

あらかじめ祖父母が孫に1,500万円を一括で贈与して、その資金を入学金、授業料、スイミング、留学費用等の支払いに充当するなどの使い方が考えられます。この制度も有意義かつ税負担なく若い世代に贈与することができますので、ぜひご検討ください。

ただし、贈与を受けた孫が30歳になった時点等で、受けた資金が残っている場合には、その時の資金残額に贈与税が課税されます。また贈与した祖父母が死亡した場合、その孫が23歳以上であるとき等においては、その死亡前3年内に贈与した資金でこの非課税の制度を受けたものについては相続税の対象となります。

この教育資金一括贈与は要件や手続きが詳細に定められています。事前によく税理士にご相談ください。

不動産を贈与するには

最後に不動産贈与についてお伝えします。「同居している長女に自宅不動産の名義を移そうと思うのだけど…」。時折このようなご相談をいただきます。

不動産を贈与する場合、土地は原則路線価評価、家屋は固定資産税評価額で評価するため、一般的な時価より低い価格で贈与できる可能性が高く、贈与税負担が軽く済むことが想定されます。

一方、不動産を贈与する場合には贈与税だけでなく、登録免許税と不動産取得税が課されます。登録免許税は法務局で所有権移転登記をする際に、不動産取得税は登記完了から約6ヶ月後に支払うことになり、思わぬ税負担に驚かれる方もいらっしゃいます。

なお、不動産が贈与で移転する場合と相続で移転する場合とでは、次のような違いがあります。
・土地の評価額を下げる小規模宅地の減額特例は相続税では使えるが、贈与税では使えない
・不動産取得税は贈与では課されるが、相続では課されない
・登録免許税の税率は贈与では2.0%だが、相続では0.4%となる

上記の通り、不動産について生前贈与が税負担の観点から有利になるとは一概に言えません。一度行った贈与を元に戻すのは非常に困難です。事前に税理士等の専門家と詳細に検討することを強くお勧めします。