6月前半の中国株は回復が続いていたものの、終盤に大きく調整
6月前半の中国株は、中国本土株、香港株ともに緩やかな回復が続いていたものの、6月11日(木)と12日(金)にかけて大きく調整する展開となりました。
調整した理由は大きく2つあります。1つは新型コロナウイルスの感染拡大の第2波が警戒されたことです。もう1つは米国のFRB(連邦準備制度理事会)がFOMC(連邦公開市場委員会)で、2022年末まで利上げしない意向を示唆する一方で、パウエルFRB議長が新型コロナウイルスのパンデミックが経済に与える打撃はより長期化する恐れがあると示唆したことです。
また、FRBが新たな金融緩和の措置を発表しなかったことから、FRBの大規模な量的金融緩和やトランプ米政権の財政政策などで、新型コロナウイルス後の経済回復を期待してこれまで上昇が続いていた米国株に、利食い売りが入るような形で大きな調整が起こったことも理由として挙げられます。
一方、ローソク足を見ると、長らく押し目を待っていた投資家にとっては待望の押し目が到来した様子でもあります。6月12日(金)の香港ハンセン指数は24,000ポイント割れの23,920ポイントからスタートしたのですが、押し目を拾う動きが見られ、長い陽線を付ける形となって24,301ポイントで引けています。
長らく続いたコロナウイルスラリーの中で初めて大きく下がったところであり、押し目買いが入り、安い場面でした。ただ、押し目買いが継続して、再び緩やかな回復基調に戻るのか、それとも潮目自体が変わってしまったのかはまだわからないところであり、今後はそのあたりに注意して様子をみていきたいところです。
6月12日(金)のニューヨークダウも気迷いを表す長い十字線が、前日の大陰線に包まれるように出ており、上に行くのか、下に行くのか、微妙な市場心理を表しています。
中国の経済指標:経済回復を示唆する一方で、市場予想を大きく下回るものも
一方、6月上旬に発表された中国の経済指標を確認してみると、まず、5月のCaixin中国製造業PMIは市場予想の49.6や4月実績の49.4を超える50.7となり、景況感の境目である50を超えてきました。Caixin中国サービス業PMIも55.0となり、市場予想の47.3や4月実績の44.4を大きく上回りました。そして、5月の人民元ベースの輸出も1.4%増と市場予想の3.2%減を上回りました。
ただ、これらの経済回復を示唆する指標が出ている一方で、5月の生産者物価指数(PPI)は3.7%減と、市場予想の3.3%減や4月実績の3.1%減を上回る減少幅であったことや、人民元ベースの輸入が12.7%減と、市場予想の3.8%減や4月実績の10.2%減を大きく下回るなど、勢いよく経済が回復しているわけではないことを示す指標も出ています。
米中対立:株価が調整したところは優良銘柄の良い買い場
今後ですが、新型コロナウイルスの感染拡大の第2波がどうなるかと米中の対立がどこまで激化していくかが材料になりそうです。
米中関連についてはトランプ米大統領が対中制裁措置の発動を警告する一方で、中国政府も内政干渉だとして報復措置を示唆していることから今後、制裁措置などが発表されて株価に悪影響を与える恐れがあります。
一方で新型コロナウイルスの感染拡大の第2波についても感染再拡大を伝えるニュースが出れば市場心理の重しとなりそうです。ちなみに、北京では集団感染が判明し、6月14日の発表によると新たに44人の感染が確認されており、北京市政府は「非常時に入った」と宣言しています。
しかしながら、いずれにしても株価が調整したところは優良銘柄の良い買い場と考えて良いと思います。米中対立については、中国に深刻な打撃を与えれば米国経済も悪影響が出ることは避けられないことから、結局は重大な影響を与える政策は打ち出せないと思えます。また、第2波についても早期から対策が採られると思いますので、早めに収束すると考えられるためです。