2020年4月の価格動向
J-REIT価格は4月中旬になっても値動きが荒い日もあるが、価格帯としては一定のレンジで推移している。3月の東証REIT指数は、100ポイントを超える下落が5営業日、上昇が3営業日と、3月中旬までの暴落とその後の反発により乱高下した。4月は概ね1,550ポイントから1,600ポイントのレンジでの動きとなっている。
一方でJ-REIT価格は反発したが、東証REIT指数で見れば2014年前半の水準に留まっている。日経平均株価が2017年後半の水準まで回復していることと比較すると、J-REIT価格の戻りは出遅れ感が強い。その要因として、東証REIT指数への寄与が大きいオフィス系銘柄の価格がオフィス市況の悪化懸念によって戻っていないことが大きい。
オフィス系価格の低迷が続いている要因は、4月9日掲載のコラムでも記載したとおり、オフィス市況の悪化懸念が強まっていることが大きい。さらに時価総額が大きい銘柄が多いことや、商業施設系銘柄や商業施設を保有する総合型銘柄の価格の低迷が続いていることも、東証REIT指数が回復しない要因となっている。
商業施設保有銘柄の物件取得は、都市型中心へシフトしていた
J-REITの商業施設取得は近年では都市型の物件が中心となっていた。イトーヨーカ堂やイオンなどの郊外に所在するGMS(総合スーパー)の不振を背景に閉店する事例も発生しており、人口が増加している都市部の物件の方が長期的な収益の確保が可能と判断していたためだ。
このような動きの代表格が、商業施設系で資産規模が最大の日本リテールファンド投資法人(証券コード8953、以下JRF)だ。JRFは郊外型物件の売却と都市型物件の取得という入替え戦略を進めている。この戦略は、新型コロナウイルスの影響が鮮明になった4月13日に公表した2020年2月期の決算説明会資料でも「都市部にフォーカスしたポートフォリオを目指す(p30)」とし、継続するかまえだ。
一方で新型コロナウイルスは、都市部の商業施設に大きく影響を与えることとなった。大半の入居テナントが、いわゆる「不要不急」に分類されてしまう業態であるためだ。
業績予想の下方修正の可能性を視野に入れた投資を
JRFは、新型コロナウイルスの影響により、営業収益(売上高に相当)が当期(2020年8月期)には8億円、次期(2021年2月期)に2億円弱、それぞれ前期と比較して減収となる予想を公表している。JRFの当期予想の営業収益は、売却益を除外すると300億円程度であり、減収比率は3%以下に過ぎない。しかし、当期の売却益を除いた当期純利益ベースの1口当たり分配金は、修正前の4,262円から3,997円までと6%を超える減少となっている。
JRFは1口当たり分配金の減少を抑える目的で、当期に発生する売却益の内部留保に充てる分を減少させることとした。これにより当期の1口当たり分配金は、修正前の4,600円から4,500円と2%程度の減配に止めている。
ただし、当期及び次期の予想は、4月6日時点のテナントとの交渉状況などに拠るものであり、緊急事態宣言発令に伴う影響は算定が困難なため、加味していないとしている。他の商業施設を保有する銘柄でも本稿執筆の5月7日時点では算定が難しい状況であり、すでに公表している業績予想が下方修正となる可能性がある。
当然ながら業績の見通しがつかない状況では、特に機関投資家は商業施設系銘柄に投資を行うことが難しくなっている。個人投資家にとってみれば高い利回りが魅力に映る部分もあるが、短期的には一定程度の減配を視野に入れて投資を行いたい。新型コロナウイルスの影響が一定期間で収束すると考える投資家にとっては、絶好の投資機会となりそうだ。